政府は国家戦略特区の事業計画として、家事代行業の携わる外国人の在留要件を地域限定で緩和する方針を決定した。家事代行の普及により、働く女性の負担を軽減させ、女性の社会進出を一層推し進めていきたい考えだ。
安倍政権の「新三本の矢」の一つである女性の活用、出産・育児の支援は外国人労働者の手によって実現されるのか?
地域限定で各種規制緩和を実施する国家戦略特区の事業計画の一環として、政府は一般家庭の家事代行業務に従事する外国人の在留要件を神奈川県において緩和する方針を固めた。さらに大阪では外国人観光客が個人宅を宿泊施設として利用する、いわゆる民泊の営業についても認められるという。
女性の社会進出や結婚・出産後の職場定着が停滞する要因とされている家庭内の家事労働負担を、外国人労働者の家事代行業就労によって軽減しようとする考えだ。
日本の出入国管理法(入管法)では家事労働、いわゆるメイドとして働く目的の外国人の入国を認めていない。海外では家事代行業就業者向けの「メイドビザ」が存在する国もあるが、今回の在留要件緩和によってメイドビザと類似するシステムが作られることになる。
現在、男女、未婚既婚関わらず、家事労働の負担にどう向き合うかが注目されており、掃除や洗濯などの家事代行サービス業者も以前と比べ、多くなった。一部で積極的にこれらのサービスを利用する世帯がある一方、必要性を感じつつも利用したことがない世帯の方が多い。
2014年に実施された野村総合研究所<4307>の調査によれば、首都圏・大阪在住の25歳~44歳の女性を対象にしたアンケート(有効回答41330人)では、70%が「サービスの存在は知っているが、利用したことがない」と回答しており、既存利用者は3%にとどまった。
未利用者の「利用しない」理由の多くは料金、または人を住居内に入れることへの抵抗感だ。家事代行サービスを利用する層の多くは比較的経済的に余裕のある世帯であるのが現実であり、いわゆる富裕層以外の一般家庭で家事代行サービス利用を普及させるにはまだ時間がかかる。
そして他人が家を出入りすることへの抵抗感であるが、こうした心理的な感情は政府がどう施策しようとも変えることは非常に難しい。日本の現状では外国人ということで心理的なハードルがさらに高まる世帯もあるだろう。
今回の規制緩和はいよいよ日本が移民を受け入れる伏線のような印象も拭えないではないが、政府はまず、移民受け入れ是非問題よりも先に、家庭内の家事・育児問題で国民に経済的負担をかけさせない政策を考えるべきだろう。(編集担当:久保田雄城)