のれんを守るのは楽じゃない――。2015年に倒産した業歴30年以上の『老舗』企業は2,531件で、倒産に占める構成比は、前年比1.7%増の32.3%と過去20年で最高を記録したことが、東京商工リサーチの「業歴30年以上の『老舗』企業倒産」調査でわかった。全産業の倒産がバブル末期並みの低水準で推移するなか、老舗企業の倒産は構成比を高めている。倒産企業の平均寿命は24.1年だった。
今回の調査は、2015年の企業倒産8,812件(負債1,000万円以上)のうち、創業年月が判明しない個人企業を除く7,832件を対象に分析した。同リサーチでは、業歴30年以上を『老舗』企業、業歴10年未満を『新興』企業と定義している。
倒産件数に占める老舗企業の構成比は2011年以降、5年連続で30%台が続いている。この苦しい状況を同リサーチでは「老舗企業は長年培ってきた信用と資産が評価され、金融機関からの支援を受けやすかったが、デフレで資産の担保価値が目減りし、円安に伴う原材料高騰などもあり、企業体力を消耗させているところが多い」とし、さらに「老舗であるがための『過去の成功体験』から抜け出せないこと、経営環境の急激な変化への適応力が低下したことも無視できない」と分析している。
一方、新興企業の倒産は1,798件(構成比22.9%)で、構成比は前年(23.8%)より0.9ポイント低下し、2009年以来6年ぶりに22%台にダウンした。この業歴の企業の設立はバブル以降にあたり、同リサーチでは「資産が乏しく金融機関からの借入が難しい反面、経営環境の変化にも身軽に方針転換できる利点が発揮されている」とみている。
同リサーチでは「老舗企業は長年の業歴から一定の事業基盤を築いているが、強みである資産、経験、ブランド力が信用を高める時代は終焉を迎えていると思われる。グローバルな時代の変化に合わせたスピード感や柔軟な発想に課題を抱えている。今後はどのように老舗企業の強みを前面に出すか、経営者の力量が問われている」と分析した。
倒産企業の平均寿命が24年というと、新卒で入社した若者が定年まで勤められないということだ。もちろん、倒産せずに50年、100年生き続ける企業もあるわけだから、全企業の平均寿命とは言えないが、厳しい現実の数字に違いはない。老舗企業の頑張りは、しばしばマスコミが好んで取り上げるところが、美談だけでは済まない経営努力まで考えなければならない。(編集担当:城西泰)