継続40年の若者台頭奨励制度と人材育成。人材育成の温故知新

2016年02月27日 20:42

 少子高齢化が加速する日本社会において、優秀な人材の確保は企業の存亡にもかかわる大きな関心事になりつつある。

 企業の欧米化が進むにつれ、戦後日本人の意識に根強かった「終身雇用」に対する絶対的な思想も薄まってきており、より好条件を求めて転職を繰り返すものや、転職組でも優秀な人材であれば厚遇する企業も増えてきている。しかし、そんな中だからこそ、あえて今、人材育成に力を入れ、優秀な人材の囲い込みに努める企業も少なくない。

 世界的に見ると、日本は他に類を見ないほど、創業100年以上の長寿企業が数多く存在している国だ。なぜそんなに長寿企業が多いのか、その理由はやはり、人材育成にあるようだ。

 日本の商業には、その昔、丁稚制度というものがあった。丁稚制度は仕事でありながら、一種の徒弟制度であり、10歳前後で丁稚として入店すると無給で雑用や使い走りなどに従事させられたという。17、8歳ぐらいで手代に昇進するまでの7~8年もの間、無給での使い走りが続いたというから、今なら、ブラック企業も極まれりといったところだろう。

 しかし、そのお陰で、丁稚のうちに仕事を覚え、いずれは手代、番頭を経て、上手くいけば支店を任されたり、暖簾分けをされたりして、自分の商店を持つことを許される者もいた。商店にしても、支店を任せたり、暖簾をわけたりするのだから、それ相応の覚悟で臨んでもらうのは当然のことといえる。

 しかし、今はそのような人勢育成ではなく、若手のチャレンジや成功体験につながる制度が増えてきている。

 そんな中、ネット広告代理店事業のほか、アメーバピグなどのネットサービスを展開するサイバーエージェント<4751>などは、新興企業らしいユニークな人材育成を行っている。同社の人材育成方針は基本的に「若手の台頭を喜ぶ組織で、年功序列は禁止」というもので、具体的なものとしては、2年ごとに最低2名の取締役を交代する「CA8」という制度や、「ジギョつく」という、年齢や入社年次は関係なく社員全員が参加可能な事業プランコンテストなど、キャリアに委ねない攻撃的な人材活用を積極的に行って、たびたび話題となっている。

 一方、自動車用の防振ゴムなどの製造販売で世界トップシェアを誇る住友理工<5191>は、何と40年間に亘って1日も途切れることなく、現場監督者を目指す人のための「F(フォアマン)研修」というものを実施している。F 研生は各部署から選抜された 3~4 名がチームとなり、約3ヶ月間、自部署の仕事から離れて現場の改善活動に没頭する。40年間での延べ受講者数は 4369 名。総テーマ数は1436 に上る。実直な技術職らしい人材育成だ。同社のグローバル化に伴い、海外拠点にも日本のモノづくり、改善制度を広めるべく、「グローバルF研」の発足が予定されている。
 
 人材育成の方法に決まりはないし、それぞれの業種、業態によって違いがあるべきだが、その方法を覗き見れば、企業の姿も見えてくる。その企業の将来の姿も見えてくるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)