政府関係機関である国民生活センターの業務の一部を、現在の相模原市から徳島県へ試験的に移転をさせる意向を河野太郎消費者担当相が示した。8日に面会に訪れた飯泉嘉門知事から、消費者庁の同県への移転を要請された際に表明した。徳島県は消費者庁と同センター、内閣府消費者委員会の移転を要望している。
政府は地方創生のため、企業の本社機能の地方移転も進めている。移転してきた企業への減税を促すため、減税額の最大4分の3を地方交付税として財政措置しているのだ。経済産業省によると、20県程度がこの補助制度を導入・計画している。
長野県は東京23区から本社機能を移す企業に法人事業税を3年間95%減額、富山、石川県は90%減額する。ほかにも青森、山形、福井、山梨などの県も税の優遇制度を検討している。福岡県は23区だけでなく県外全域から、兵庫県は東京、愛知、大阪周辺の三大都市圏から移転した企業に法人事業税を優遇する。
企業移転のメリットとしては、賃料の安さや、子会社と同じビルに「同居」でき、業務のスピードがあがる、ライバル会社が少なく存在感をアピールでき、良い人材を集められる、などがある。また、2011年の東日本大震災がきっかけとなった企業も多い。電車が止まったことで東京本社へ通えなくなる人が続出し業務に支障が出た経験から、機能を分散させる重要性が分かった、ということだろう。
富山県黒部市にあるファスナーの世界シェア首位を誇るYKKグループの製造・研究開発拠点では、東京本社の約1500人のうち約230人が3月までに異動してくる予定だ。現在この黒部事業所には6000人を超す従業員が働いているが、社員からは「長時間の通勤から解放された」などの声がきかれるという。
02年に東京から創業地の石川県小松市に本社機能の一部を移した建設機械大手のコマツ<6301>。付近に下請け工場や部品メーカーが多く、そうした取引先と連携しやすくするねらいがあった。11年からは地元の学生限定の新たな採用制度も導入し、毎年予定人数の20倍以上の応募がある。
本来は国民生活センターなどの公的機関がこの動きの先陣を切るべきだが、官公庁の地方移転には否定的な声も多い。林幹雄経済産業大臣は、大阪府から中小企業庁の移転を要望されていることについて「災害時に東京のほうが各省庁との連携がとれるし、対応が迅速にできる」と話した。
長野県から移転を求められている特許庁についても「関係機関が集中する東京のほうが迅速な審査ができる」としている。地方創生はやはり一筋縄ではいかないようだ。(編集担当:久保田雄城)