インターネット上で電子的に取引される仮想通貨の購入を巡り、トラブルが増えている。狙われるのはここでも高齢者で、悪質な「劇場型勧誘」であれよあれよという間に虎の子のおカネを取られてしまう。国民生活センターでは、「仮想通貨は取引相場の価格変動リスクを伴うため、将来必ず値上がりするというものではない」として、うまい話には乗らないように注意喚起している。
仮想通貨に関する同センターへの相談(電話や訪問による勧誘や劇場型勧誘に関するもの)は、2014 年度以降に増えていて、2014年度は112件、2015年度は12月時点ですでに149 件に上っている。
相談では、「必ず値上がりすると言われて仮想通貨を購入する契約を結び、代金を支払ったが解約できない」、「仮想通貨を代わりに買ってくれれば高値で買い取ると言われて契約したが、買い取られない」などというものが目立つ。仮想通貨がそもそもどういったものなのかを理解していない高齢者が契約しているケースもあり、認知症の高齢者が被害に遭ったこともあるという。
同センターで「劇場型」と呼んでいるのは、ターゲットに対して複数の人物が違った役割でアプローチしてきて、まるでストリーの中に入り込んでいるかのような流れで契約してしまうこと。
例えば、業者Aから自宅宛に仮想通貨のパンフレットが届いた後、仲介業者を名乗る Bから電話があり、「パンフレットが届いた人にしか仮想通貨は買えない。買ってくれたら3 倍以上の値で買い取る」と持ちかけられた。熱心な説得に話を信用することにし、A とはファミリーレストランで仮想通貨購入契約をして50万円を渡すと、後日販売証明書が届いた。 するとまた、Bから電話があり「200万円分の仮想通貨があれば投資家が買い取る」と言われ、さらにAと150万円分の契約をして現金を渡した。Bは仮想通貨を買い取らず逆に買い増しを勧めてくる――といったもの。
同センターでは、「不審な電話は相手にせず、『興味ありません』『お断りします』などと言ってすぐに切ること。また、留守番電話機能や自動的に通話内容を録音する「通話録音装置」などをといった『防犯アイテム』を利用する方法もある」と意識を高めることを呼びかけている。
株や円ドルさえも、どれだけ実体があるのかわからない現代。「仮想通貨、知らないんですか?」と言われると社会の流れに乗らなければと思う高齢者も多いのではないか。
仮想通貨の一種であるビットコインを巡り、2015年8月には顧客からの預かり金約3億2100万円を着服したとして、コイン取引所運営会社の最高経営責任者が業務上横領容疑で警視庁に逮捕されている。(編集担当:城西泰)