インターネット上の仮想通貨ビットコインの取引場を運営するMT.GOXは、 先日システムエラー発生による一時的なビットコインの引き出し停止を発表した。それを受けてビットコイン価格は7万円台から5万円台へと下落し、システムの不安定さという問題が露呈するとともに、価格が乱高下しやすいという性質が改めて確認され、今後の普及にも影響しそうだ。
ビットコインとは、紙幣や硬貨が発行されないインターネット上で流通する仮想通貨で、実際には電子データである。利用者の数は2009年頃から徐々に増加し始め、現在世界中で数百万人に達している。ビットコインの発行は、開発者達の計算作業の行程で決まりその流通量も限定されている。しかし、通常の通貨と異なり事業主体や国家によって流通が管理されない無国籍通貨であるため不安定になりやすい。
米国ドルや円などとの交換はウェブ上の取引所で行われ銀行を通さずに世界中で使用できる。そのため、決済での手数料がかからず個人取引の決済や国を超えた送金などの利用が拡大している。また、購入の際には個人情報を必要としないため銀行口座などを持たなくてもスマホなどで簡単に取引できる。
このような特徴からインフレ率の上昇や預金封鎖などで自国通貨の信頼度が低下した国では、その逃げ道としてビットコインが利用され代替通貨としての魅力を高めている。さらに国際的な制裁で外貨を獲得できない国などで利用価値が高い。
この利用の拡大で13年初頭は1ビットコイン当たり1000円ほどで取引されていたが、同年後半には10万円を突破するなど100倍以上の急騰を見せ投資家の注目を集めるようになった。しかし、その一方で価格の乱高下が激しくリスクの高さも見せつけている。同年12月に中国中央銀行が中国国内でのビットコインの利用に規制をかけると発表した時には、価格が約半分ほどまで急落し利用者を落胆させた。
また、データは記録されるが購入の際には個人情報を必要とせず購入者はわからないので、資金洗浄や麻薬取引などの違法行為に悪用される事例も増加し、各国で問題視されるようになった。
こうした背景の下、中国以外にもロシアやインドネシアはビットコインでの決済を禁止。ノルウェーもビットコインを法定通貨と認めないなど、各国でビットコインに対する強い警戒姿勢が表面化し始めた。この規制の流れは、消費者保護、資本流出の防止や犯罪での悪用防止を進める観点から本格化しそうである。
さらに、現実通貨よりも価格変動が大きくハイリスクのままでは、決済手段にも利用しにくくなるし、投資対象としても敬遠されるだろう。これではビットコインの利用者数は伸びず国際的な主要通貨としての地位を獲得することは困難となる。今後のさらなる普及のためには、一定の管理を担う事業主体などの出現が期待される。(編集担当:久保田雄城)