混戦する電子マネー合戦に黒船到来か

2014年08月31日 12:51

143 週末記事(国内カード関連市場)_e

電子マネー花盛りの裏では、利用者獲得を目指す電子マネー発行各社のしのぎを削るサービス合戦が繰り広げられているが、さらにこの度、アメリカから大きな波が押し寄せたことで、日本の電子マネー市場は戦々恐々としたムードに包まれている

 近頃、財布から現金を取り出すということが確実に減っているように思われる。全国的に相互利用が可能になった各社交通系ICカードの普及に伴い、通勤、通学で利用する交通機関において現金で切符を購入するという行為は激減した。駅構内の売店はもちろん、コンビニでの買い物の支払いもICカードで済ませることは、もはや日常的だ。

 また、交通系以外でも、日用品の買い物で使える電子マネーやレンタル店・ファミリーレストランを利用する度に貯まるポイント、ネット通販で支払いに使えたり貯めたりできるポイントなどはもう日々の生活では当たり前のように私たちの周りに溢れている。数ある電子マネーをスマートに利用するのは、もはや現代人の嗜みとも言えるのではないだろうか。

 そんな電子マネー花盛りの裏では、利用者獲得を目指す電子マネー発行各社のしのぎを削るサービス合戦が繰り広げられているが、さらにこの度、アメリカから大きな波が押し寄せたことで、日本の電子マネー市場は戦々恐々としたムードに包まれている。その波とは、世界的通販サイトを運営するAmazonの電子マネーサービス「Amazonコイン」だ。

 Amazonは2013年5月から、本国であるアメリカ及び欧州各国で仮想通貨「Amazon Coins」を展開してきた。もともとは、同社が提供するタブレット端末Kindle Fireシリーズ向けの電子マネーサービスだったが、Android搭載の端末で使用できる電子マネーとしてサービスを拡大している。それがいよいよ、日本でも「Amazonコイン」として導入されることになったのだ。

 「Amazonコイン」はAmazon Androidアプリストアにて購入することができ、同アプリストア内でのアプリケーション、ゲームの購入やアプリ内課金で使用することができる。今後、特定アプリのダウンロードや特定ゲームのクリア時に特典として「Amazonコイン」を獲得できるというサービスも予定されている。

 現状ではアプリでの使用のみに限定されていることや、一部のみの決済には使用できないことなどの制約も多く、イオングループが提供する「WAON」や、プリペイド式で利用店舗数ナンバー1を誇る、楽天の「楽天Edy」など、先行するサービスには及ばないものの、今後のサービス拡充によっては大きな脅威となることは必至だ。さらに、先日サービスを開始したKDDIのauユーザー対象の電子マネー「au WALLET」などのように、スマートフォン、タブレット端末市場に提携アプリとして参入してくれば、機種選択決定の決め手となる可能性も秘めているだろう。

 今や買えない物はないとも言われ、究極のワンストップショッピングを目指すAmazonだけに、その動向が注目される。果たしてAmazonコインは電子マネーの黒船か。いずれにしても、今後は益々財布を開く回数が減りそうだ。(編集担当:藤原伊織)