JR東日本は、東日本大震災で受けた鉄路被害からの復旧状況を発表した。それによると、大震災の津波の被害と福島第一原子力発電所事故の影響で運転を見合わせていたのは、常磐線、気仙沼線、山田線など合計約400km(2011年4月4日時点)だった。これまで順次復旧させてきたが、その距離は約177kmにとどまっている。鉄路が復旧していない地域では、代行バスなどが運行されている。
まだ運転再開ができずに振替輸送をしている山田線(宮古-釜石間)については、三陸鉄道による南北リアス線との一体運営について沿線自治体等と合意しており、2018年度内の開業を予定。常磐線の相馬-浜吉田間は内陸側にルートを移設して2016年末までの運転再開を予定している。
BRT(バス高速輸送システム)による仮復旧をしていた気仙沼線と大船渡線については、BRTの継続運行を本格復旧とすることで沿線自治体と協議したところ、ほとんどの自治体が受け入れたが、気仙沼市とは「仙台へのアクセスや地域振興の点などで協議を継続」しているという。
一番の問題は、常磐線の福島第一原発20キロ圏内。避難指示解除準備区域 については2017年内の運転再開を目指しているが、帰還困難区域を含む富岡-浪江間については空間線量率が高い地域があり、線量低減が運転再開へ向けての重要な課題となっている。JRでは2015年8月から除染試験施工を実施し効果的な除染方法を検証するとともに、地震により損壊した橋梁の設計、撤去工事を並行して行うなど、「運転再開に向けた検討と準備を実施中」という段階だ。
インフラの復旧と整備の大変さを物語る状況だが、被災者の労苦に加え大震災関連の企業倒産がいまだに後を絶たないなど、今も被害は続いている。「何年目」ということだけで注目するのではなく、政治はもちろん、我々国民全体が関心を持ち続けることを忘れてはいけない重大事である。(編集担当:城西泰)