まもなく「東日本大震災」から丸5年を迎える。「震災」関連倒産は緩やかな収束傾向をたどっているが、まだ月10件前後で発生している。1995年の「阪神・淡路大震災」時の関連倒産は発生から3年で収束がみえたが、「東日本大震災」はそれを上回る甚大な被害から影響は長期に及んでいるようだ。
東京商工リサーチによると「東日本大震災」関連倒産件数は2月24日現在で累計1,698件に達したという。また、倒産企業の従業員被害者数は約2万7,000人にのぼり、1995年の「阪神・淡路大震災」時の6.1倍に膨らんだ。都道府県別では、島根県を除く46都道府県で関連倒産が発生し、全国規模に及んだ。特に宮城県では、この5年間での倒産の3件に1件を震災関連が占めたとしている。
1995年の「阪神・淡路大震災」時では、関連倒産が発生から3年で収束し、累計314件だったのと比べて5.4倍の規模になっている。各年別でみると、2011年が544件、2012年490件(前年比9.9%減)、2013年333件(同32.0%減)、2014年175件(同47.4%減)、2015件141件(同19.4%減)と推移してきた。2015年は震災時2011年の4分の1に減少して収束傾向が目立った。ただし、減少したとはいえ月平均では11.7件ペースで発生し、震災の影響から脱却できない企業がまだ多いとしている。
被害パターン別では、取引先・仕入先の被災による販路縮小や受注キャンセルなどが影響した「間接型」が1,556件(構成比91.6%)だったのに対し、事務所や工場などの施設・設備等が直接損壊を受けた「直接型」は142件(同8.3%)にとどまったとしている。このように、「間接型」がほとんどを占めたのは、倒産企業は経営体力が脆弱なところが多く、震災が業績不振に追い打ちをかけたとみられるという。また、「直接型」が少ないのは、未曾有の災害で会社そのものが消失したケースや、倒産には至らないものの休・廃業に追い込まれた企業があることも影響したとしている。
また、「震災」関連の倒産企業の従業員被害者数は、2016年2月24日現在で2万6,985人に達した。「阪神・淡路大震災」時は4,404人(3年間で集計終了)で、単純比較で6.1倍の規模になった。都道府県別にみると、東京都が8,856人(構成比32.8%)で全体の約3分の1を占めた。次いで、宮城県2,001人(同7.4%)、北海道1,323人(同4.9%)、大阪府1,264人(同4.6%)、栃木県1,157人、神奈川県1,023人、福岡県1,003人と7都道府県で1,000人を超えた。
震災で甚大な被害を受けた岩手県、宮城県、福島県の被災3県の合計は3,362人(構成比12.4%)にのぼった。なお、倒産企業の従業員数は正社員のみで、パート・アルバイトなどを含んでいないため、倒産企業の実質上の従業員数はさらに膨らんでいるとみられるとしている。
都道府県別では、島根県を除く46都道府県で関連倒産が発生した。1995年の「阪神・淡路大震災」時では23都府県だったのと比べて2倍に広がった。津波の被害が東北沿岸部から太平洋側の広範囲に及んだため、被害の甚大さも相まって影響が全国規模で拡大したという。
震災からの復興は時間をかけて進んでいるが、一方で事業再開しても軌道に乗らず事業を断念するケースも見られるという。さらに長らく事業停止していた企業が、ここにきて法的手続きに踏み切る事例もある。震災の後遺症からまだ脱却できない企業が数多いことも認識する必要があると分析している。(編集担当:慶尾六郎)