3月8日は、1985年に全日本ミツバチ協同組合と日本養蜂はちみつ協会が制定した「ミツバチの日」。由来はミツ「3」とバチ「8」の語呂合わせだ。
ミツバチといえば、真っ先に思い浮かぶのがハチミツだろう。日本でのハチミツの需要は古く、平安時代にはすでに宮中への献上品として用いられていたことが記録に残っているという。また、明治の初期に飼育に向いたセイヨウミツバチが入ってから生産と需要が拡大したが、それまではハチミツの生産高は少なく、大変な貴重品として扱われていたようだ。
農林水産省生産局畜産部の資料によると、2015年度の蜜蜂飼育戸数は9567戸、蜂群数は213000群で、飼育戸数5353戸、蜂群数175000だった2010年以降、増加傾向で推移している。これは2013年以降、届出義務が趣味養蜂にも拡大されたことが要因である。
半世紀以上、養蜂業に携わっている株式会社山田養蜂場には、趣味で養蜂を行っている従業員もいるという。そのひとり藤善博人さんは「養蜂はとても奥が深く、一筋縄ではいかないところが面白いのです。ただミツバチを巣箱に入れ飼っていればハチミツが出来るわけではありません。特にセイヨウミツバチは日々の管理がとても重要です。餌は足りているか、産卵は順調か、分封の兆しはないかなどチェックします。他にも、巣箱の手入れや病害虫対策、暑さ寒さ対策など、とても手間のかかる作業です。しかし、自分の飼っているミツバチが集めたハチミツの採れたてを味わえるのは、養蜂の最大の魅力です。」と語ってくれた。
現在、ハチミツの国内流通量は、約41000トンだが、うち90%以上が輸入となっている。また、用途としては、国産ハチミツのほぼ全てが家庭用で使用されているのに対して、輸入ハチミツは約55%が家庭用、約45%が、製菓や製パン、化粧品等の業務・加工用仕向けとなっている。さらに面白いのは、国産ハチミツと輸入ハチミツの価格の差だ。国産ハチミツの卸売価格が1キロ当たり約1000円~~2300円と高額なのに対し、輸入のハチミツは300円と、約三分の一以下の安い値段で売買されているものもある。その一方で、ニュージーランド産のハチミツのように2758円と、25.5%の関税が掛けられているとはいえ、国産ハチミツよりも高値となっているものもあり様々だ。
ミツバチといえば、2007年にアメリカの各地で、巣箱から突如、大量のミツバチがこつ然と消えていなくなる「蜂群崩壊症候群(CCD)」という現象が報告されて話題になった。原因は未だに判っておらず、様々な憶測も飛び交っているが、はっきりしているのは、CCDが頻発すると、ハチミツの生産のみならず、世界経済への大きな打撃や、食糧不足の問題にまで発展しかねないということだ。なぜなら、私たちが口にする野菜や果物の多くが、ミツバチの花粉媒介によって成り立っているからだ。とくに100以上にのぼる農作物の商業的生産がミツバチの花粉媒介に依存しているアメリカでは、マスコミが「世界の農業を揺るがす脅威」と報じているほど、社会問題となっている。
また、国連が設置した科学者組織「IPBES」によると、花粉を運び農作物作りに貢献するミツバチなどの生物がもたらす全世界の経済利益は最大で約65兆円にも上ると指摘した報告書を発表したのも記憶に新しい。
普段は気にもとめないが、我々人間社会の豊かな生活は、あの小さなミツバチの営みに依存しているところも大きい。自然と共存するということを、3月8日のミツバチの日に、今一度、考え直したいものだ。(編集担当:藤原伊織)