現在、パブリッククラウドをはじめ、データセンターからエンドユーザーにITやコンテンツなどを提供するクラウド型サービスの利用が増えている。これに伴い、ユーザー企業のパブリッククラウドへの接続のためのWAN回線利用や、クラウド型サービス事業者のデータセンター間接続回線などの利用が増加しているという。
これを受け、IDC Japanは、通信事業者が法人向けに提供するWAN(Wide-Area Network、広域ネットワーク)サービスの国内市場予測と市場シェアを発表した。
パブリッククラウド用途のWANサービス市場は、2015年の市場規模が58億円、前年比成長率65.0%と急速に成長している。また国内事業者データセンター間接続用途のWANサービス市場規模も、2015年の市場規模が98億円、前年比成長率15.5%と順調に成長しているという。これらは、国内WANサービス市場全体の2015年の市場規模が7,031億円、前年比成長率マイナス0.1%であることを考えると、小規模ながらも急成長しているセグメントと言えるとしている。
また、パブリッククラウドやデータセンター間接続にも多く用いられるイーサネット専用線市場では、NTTコミュニケーションズやKDDIといった大手通信事業者以外に、Coltテクノロジーサービス(売上額シェア12.1%)、アルテリア・ネットワークス(同10.8%)、TOKAIコミュニケーションズ(同5.4%)のような中堅通信事業者が健闘している。こうした中堅事業者がサービス事業者向けに広帯域回線を積極的に提供してきたことが、この背景にあるとIDCではみている。これらの中堅事業者は、パブリッククラウド接続でも早い時期からリーズナブルな価格で回線を提供し、市場の認知を得ている。
IDC Japan コミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの小野陽子氏は「パブリッククラウドなどのサービス利用の拡大に伴いWANサービス市場の構造変化が始まっている。通信事業者は、急成長しているサービスプロバイダーの迅速な帯域増強ニーズを支援するなど、サービスプロバイダーへのエンゲージメントを強化すべきである。また企業向けにはパブリッククラウドへのオンデマンド接続などWANサービスの高度化を図るべきである」と述べている。(編集担当:慶尾六郎)