【今週の展望】日米の中央銀行イベントを冷静に通過できるか?

2016年03月13日 20:31

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14~15日は日銀会合。15~16日はFOMC。追加緩和にはワルノリせず、金融政策現状維持には失望せず。もし利上げされても、あわてない。

 海外の経済指標、イベントは、15~16日のFOMCが最大のイベントだが、17~18日のEU首脳会議も重要。

 14日にはインドの2月の消費者物価指数(CPI)、ユーロ圏の1月の鉱工業生産指数、15日にはアメリカの2月の小売売上高、生産者物価指数(PPI)、3月のNY連銀製造業景気指数、NAHB住宅市場指数、1月の対米証券投資が発表される。15~16日にFOMC(連邦公開市場委員会)が開かれ、16日に結果と経済見通しが発表される。今回は16日にイエレンFRB議長の記者会見がある。

 16日にはアメリカの2月の消費者物価指数(CPI)、住宅着工件数、建設許可件数、鉱工業生産指数、設備稼働率、17日にはニュージーランドの10~12月期のGDP、アメリカの10~12月期の経常収支、3月のフィラデルフィア連銀製造業景況感指数、2月のCB景気先行総合指数が発表される。

 17日にはインドネシアで政策金利が発表され、イングランド銀行(BOE)の金融政策委員会が開かれる。17~18日にEU首脳会議が開かれる。主要議題は難民問題と、英国のEUからの離脱問題。「名誉ある孤立(Splendid Isolation)」は賢者の選択か? それとも時代錯誤か?

 18日にはアメリカの3月のミシガン大学消費者信頼感指数速報値、中国の2月の70都市新築住宅価格指数が発表される。メキシコで政策金利が発表される。

 アメリカの主要企業の決算発表は、15日にオラクル、18日にティファニーが発表する予定。

 前週末11日の終値は16938.87円だった。そのテクニカル・ポジションを確認すると、移動平均は5日線の16825円、25日線の16320円が下にあり、75日線の17721円、200日線の18835円が上にある。ボリンジャーバンドでは、25日線-1σの15814円と+1σの16827円の間の「ニュートラル・ゾーン」から100円以上も上にずれて、+1σと17334円の+2σの間にある。上値がやや重くなるポジションになる。

 日足一目均衡表の「雲」は、11日は17422~18014円。今週、上限は15日まで18014円で固定されるが、17日は17721円、18日は17439円と大きく下がる。下限のほうは日を追って「天孫降臨」し、14日は17397円、15日は17224円、17日は16828円、18日は16526円。この先、28日に15996円まで下落する。雲は16日を境に大きく変化し、仮に日経平均が11日終値16938円のままでも17日になれば自動的に1月6日以来の「雲タッチ」がかなう。週末18日の上限17439円まであと501円なので、今週、「雲抜け」までできる可能性も決して小さくない。とはいえ、「雲」はそれ自体、大きな上値抵抗線だ。

 オシレーター系指標は「買われすぎ」のシグナルが2つ点灯している。+61.5で買われすぎ基準の+50を上回ったRCI(順位相関指数)と、80.4で買われすぎ基準の70を上回ったストキャスティクス(9日・Fast/%D)。25日移動平均乖離率は+3.6%でボリンジャーバンド同様にやや上寄り。それ以外は、25日騰落レシオは102.7、RSI(相対力指数)は68.1、サイコロジカルラインは8勝4敗で66.7%、ボリュームレシオは57.9だった。総合的に見て、テクニカル指標は「雲」が低く垂れ込め、ボリンジャーバンドが上寄りで買われすぎシグナルも出て「上値限定」。

 3月4日時点の需給データは、信用買い残は2月26日から375億円減の2兆4497億円で、約3年ぶりの低水準が続く。信用倍率(貸借倍率)も4.59から3.92に大きく下がり、昨年6月22日以来の3ポイント台という低さ。その一方で、裁定買い残は800億円増の1兆9144億円で4週間ぶりに増加した。それでも昨年9月以来の低水準。2月12日にマイナス25.76%という異常な数値を記録した信用評価損益率は3週連続で低下し、マイナス12.84%まで下がって「正常化」した。

 東証が発表した2月29日~3月4日の週の投資主体別株式売買動向によると、外国人は954億円の売り越しで9週連続売り越し。個人も1989億円の売り越しで2週連続の売り越し。年金がバックにある信託銀行は2813円の買い越しで15週連続買い越し。「需給三国志」は外国人と個人の売り、信託銀行の買いがほぼ均衡していた。

 前週のカラ売り比率は、7日が36.2%、8日が39.9%、9日が39.9%、10日が38.2%、11日が33.2%で、8日連続で40%を超えなくなった。40%台は、足を踏み外せばグサリと突き刺さって餌食になるショートポジションの針の山を歩くようなもので、「怖くて手が出せない」と言われていた。30%台前半は昨年12月頃の水準で、ようやく需給がバランスして望ましいレベルになってきた。

 もっとも、日経平均VI(ボラティリティ・インデックス)は11日時点で28.95で、4日時点の29.05から少し下がっただけ。12月下旬の20割れ水準まで戻っていないので、警戒を解くのはまだ時期尚早だろう。

 今週は日米の中央銀行イベントウィークだが、結果が出るのが日銀が火曜日の昼休み、FOMCが木曜日の未明なので、様子見は月曜と火曜の前場に限られる。それでもメジャーSQを通過して新規IPOが12銘柄もあり、月末の権利確定イベントはまだ2週間も先なので、投資家の関心が日銀会合、FOMC、新規IPOに向きっぱなしになる恐れがある。そこへ原油安、NYダウ大幅下落やネガティブな経済指標が入ってくると怖い。前週は前場に大きく下げても後場に引き戻すなど底堅く、それは今週もそのまま続くと考えられるが、警戒を怠ると思わぬケガをしかねない。

 それらを勘案して下値を考えるとすれば、まず想定されるサポートラインが11日のメジャーSQ値16586円。「まぼろしのSQ」ではなかったが、先物のSQ値は影響が長く続く傾向がある。25日移動平均の16320円というラインは、前週もそこまでは下がっていないので考えなくてもいいだろう。

 上値のほうは、テクニカル指標が「上値限定」を示しているので精いっぱい背伸びしても「雲」の下限(14日は17397円、15日は17224円)あたりか。週後半は雲の下限が降りてくるので、為替が円安に振れるなどして上昇のエネルギーが補給されない限り、ザラ場で上値を追いにくくなりそうだ。

 ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは16600~17400円とみる。一目均衡表の雲の抵抗を受けながらも、夜が明けたら、いつの間にかチャート上で雲の上に出ていた、という出来事も起きるかもしれない。雲の向こう側はいつも青空だ。(編集担当:寺尾淳)