日本ですべてのクルマに“ドライブレコーダー”が装着されるか? まずは「貸し切りバス」から

2016年03月19日 16:24

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現在、新しい「貸し切りバス」や「高速バス」などに装着義務化となった“自動ブレーキ装着車”には写真のような表示がある。今後は「この車両には“ドライブレコーダー”を搭載しています」と表示される?

 ドライブレコーダーとは、クルマのフロントガラスなどに取り付けた小型カメラやセンサーで車両前方を記録し続け、急ブレーキや衝突などの異常動作を感知すると、その前後15~30秒程度の映像とともにブレーキの踏み込み量などの加速度&制動状態などを保存記録する装置だ。

 交通事故が発生したとき、事故原因をめぐって当事者の証言に食い違いがあると、証言だけでは真実を解明できないことが多い。そこで、ドライブレコーダーに記録された映像から事故の原因を推測するというもの。

 米国では、同装置をイベントデータレコーダー(EDR)と呼んで、事故原因の分析に警察などが活用している。EDRは、米国警察車両や商用トラックに搭載されている「ブラックボックス」に近い仕組みだ。

 自動車事故において、その原因を探る際に複数の証言が食い違うことは少なくない。また、当事者のなかには事故で死亡し「証言が取れない」事態も発生しがちだ。このEDRがなかった時代は、互いの責任割合がどのくらいの比率になるかを判断するために、現場に残されたブレーキ痕や車両部品の破片の分布などを基にして、推測で判断せざるを得なかった。

 アメリカでは、国家道路交通安全局 (National Highway Traffic Safety Administration) がEDRの統一規格を開発し、すべての新車にEDRの装着を義務づけるように働きかけている。

 日本でも先般、長野県軽井沢町で発生した「スキーツアーバス事故」を受け、国土交通省は7日、貸し切りバスにドライブレコーダー設置を義務付ける方針を明らかにした。速度超過など不適切な運転の抑止につなげ、事故時に原因調査に役立てる。事故防止対策を話し合うため開かれた有識者委員会で示した。

 国土交通省では、2004年度より映像記録型ドライブレコーダーの搭載効果に関する調査を開始し、実際に稼働中のタクシー、トラック、バスに映像記録型ドライブレコーダーを搭載した事業社からデータを収集するとともに、その利用方法や効果について検討をしてきた。

 現在、バス事業社へドライブレコーダー設置は義務付けていない。国交省は2010年度から、中小バス会社を対象に設置費用の3分の1(上限80万円)を補助しているが、貸し切りバスへの設置は少なく、約2割にとどまっている。

 国交省は今後、装備を義務付けるドライブレコーダーの性能基準や、指導監督のマニュアル作成に取りかかる。同時に、国交省はバスの速度を抑えるために、上限速度を自由に切り替えられる速度抑制装置の開発を自動車メーカーに促す。

 加えて国交省は、自動ブレーキや横滑り防止装置の設置が義務付けられている新型の大型バス&トラックには、それら装置を備えていることを車に表示させることを検討する。これによってバス会社などに新型車の導入促進を図り、安全なクルマの普及につなげたい考えだ。さらに、大型貸し切りバスの補助席にシートベルトの設置を義務付ける方針で、乗務員にシートベルト着用の確認を徹底させるとしている。

 今後、このドライブレコーダーは、すべてのクルマに標準搭載すべき装置となるだろう。単独事故でも、この装置があれば、事故の際の速度&加速度、アクセル開度やブレーキの踏みしろ、ABSやトラクションコントロールの作動状況などがわかれば、「運転ミス」なのか「車両の欠陥・故障」なのか解析可能で、早期に規則化してほしいものだ。(編集担当:吉田恒)