「病気になってからではもう遅い。早く見つけたい」――という願いはだれもが持っているもの。血中のタンパク質を検査することで大腸がんや糖尿病になるリスクを早い時期に判定する検査キットが開発され、2月1日からサービスの提供が始まる。共同で開発したのは、ウシオ電機と創薬研究のプロトセラ(ウシオ子会社)、医療ベンチャーのバイオマーカーサイエンス。
大腸がん検査は、プロトセラが京都府立医科大学と共同で研究を進め、独自開発のペプチド解析技術を用いて血液中から大腸がんの浸潤や血管新生等に関連するタンパク質の断片(ペプチドバイオマーカー)の組み合わせ(マルチマーカー)を発見し、それを大腸がん研究試薬『ProtoKey 大腸がんリスク検査キット』につなげた。
糖尿病については、バイオマーカーサイエンスが京都府立医科大学とともに糖尿病と酸化ストレスの関係に注目し、糖尿病のリスクを示すバイオマーカーCysTTRを発見、プロトセラが質量分析を用いた測定法を確立し、『ProtoKey糖尿病リスク検査キット』として完成した。大腸がん検査も糖尿病検査も保険が適用されない自由診療で、大腸がんが3万~4万円、糖尿病が1万5000~2万円程度。医療機関や検診で利用可能。
がんの早期発見というと、自治体や企業などでの集団検診が長く行われているが、その普及が必ずしもがん死亡率の低下に結びついていないという研究も報告されている。一般的な検査を広く行うことも大切だが、自覚症状や家系などで罹患リスクを抱えている人はより精密な検査を受けるべきという考え方が、自由診療による血液や遺伝子の検査だ。従来の検査方法に不満を持っている人々も潜在的な対象となる。
ウシオ電機によると、新検査キットの利用者として、大腸がん検査は消化器官の出血のために便潜血法検査をあきらめている人たちや、過去の内視鏡検査で苦痛を受けた人や女性など内視鏡検査に抵抗感のある人々を想定し、糖尿病では、主に30歳以上の働き盛りの年齢層に勧めたいという。
また、大腸がんと糖尿病は関連が強く、糖尿病になると大腸がんになるリスクが1.4倍になることが日本糖尿病学会などの調べで分かっている。今回の2つの検査を併用することはあるのだろうか。ウシオ電機では「医療機関で判断された結果、勧めることはあり得る」としている。
集団検診にせよ、最新の血液検査にせよ、「検査を受けてみよう」という気持ちがなければ始まらない。(編集担当:城西泰)