15年度の国内ユーザー企業のビッグデータ関連投資額は535億円

2016年04月05日 08:25

画・2233万8618桁の「素数」発見される 何のために?

矢野経済研究所では、国内民間企業のビッグデータに関連した IT 投資実態と今後の展望について調査を実施した

 矢野経済研究所では、国内民間企業のビッグデータに関連した IT 投資実態と今後の展望について調査を実施した。調査期間は2015年12月~2016年2月、調査対象は国内の企業、団体、公的機関等。調査方法は各種文献調査、民間企業、および公的団体・機関等に対する郵送アンケートである。

 この調査では国内の民間企業、公的団体などにビッグデータに関する法人アンケート調査を実施し、その調査結果をもとにビッグデータ関連投資規模を推計した。その結果、2015年度の国内のユーザー企業におけるビッグデータ関連投資額は535億円であった。
  
 また、同アンケート調査において、ユーザー企業のビッグデータへの取り組み状況を調べたところ、「業務に取り込み済み(2.4%)」、「試験的に運用中(1.7%)」と回答した企業は合計で 4.1%に留まっている。現時点でビッグデータへの取り組みを進めているのは大企業が中心であり、国内全体でみると限定的な取り組みであるものと考えるとしている。

 一方で、一時期のビッグデータブームは沈静化したが、一部の企業ではより具体的、かつ本格的なデータ活用が進んでいるという。現在注目されている「IoT(Internet of Things; モノのインターネット)」、「AI(Artificial Intelligence; 人工知能)」といった新たな領域はビッグデータの活用そのものであり、大量のデータがこれらの技術の進展に寄与している。今後、ビッグデータは IoT、AI によるデータ駆動型経済を実現するための技術基盤という位置付けへと進展していくことが予想されるとしている。

 今後はIoTプラットフォームとして汎用クラウドが拡大し、格安 MVNO(Mobile Virtual Network Operator; 仮想通信事業者)が普及する。これにより、IoTサービス基盤の低廉化、及び利便性向上が進み、大企業だけでなく中堅企業等においても IoT活用機会の環境が整いつつあるものとみるとしている。AI 技術は主に金融分野を中心に進展し、本格普及の基盤を構築するものと考えるとしている。

 ビッグデータ解析の課題としてリアルタイムでの膨大なデータ処理が挙げられる。こうした課題に対して、次世代のメモリ、低消費電力ネットワーク、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサーの実用化が期待され、技術的な目途が立ち始めるものとみている。AI は画像や音声、センサーといったマルチメディア情報により複合的に事象を認識でき、こうした技術が実用化されると見込んでいる。

 AIによって、医療分野では遺伝子情報を活用した先制医療が期待される。また自動車分野においては自動運転走行の実用化が挙げられる。日本政府が 2020 年の東京オリンピック・パラリンピックまでに実用化を実現させる方針を打ち出していることから、2020 年は自動運転走行技術のデモンストレーションとしてひとつの契機になるものと考えるとしている。

 ハードの側面ではセンサーシステムの普及が加速するものとみられる。またAI技術は、自動車分野における自動運転走行、製造業のスマートファクトリー(産業ロボットの活用などによる工場の自動化)、高度な自動翻訳などを実現させると予想した。さらに AIの知的作業における範囲が大きく広がり、社会基盤の一つとしてさらなる進展をするものと考える。AI の応用分野が広がるなかで、AI 技術の産業適用がさらなる広がりをみせるものと推測している。(編集担当:慶尾六郎)