マーケティングリサーチの富士経済は、日本の医療情報システムの国内市場を調査し、2025年の医療情報システムの国内市場は現在の1.3倍にあたる4,952億円、地域包括ケアシステム関連は2.4倍の254億円に達すると予測した。また、クラウド型電子カルテにおいては10.8倍にあたる195億円まで広がるとみている。医療分野のIT化は政府も力を入れている分野で、2015年6月に閣議決定された「日本再興戦略」では、2020年までの5年間を集中取組期間としている。
同社によると、地域包括ケアシステム関係では、厚生労働省の後押しもあり多職種連携システムの導入が地域包括支援センターを中心に進んでいる。遠隔診療システムの法整備も進んでおり、診療報酬の加算が実現すれば導入の急増が予測されるとしている。これまで一部の医療施設での導入にとどまっていた遠隔看視・在宅医療向けの緊急通報システムも、自治体による一括導入などで普及が進んでいる。また、福祉施設向けナースコールシステムは潜在需要が大きく施設数も増加しているため、今後の伸びが予想されるという。
クラウド化も2025年までには大きく進展するとみられる分野だ。医療情報システムの中核となる電子カルテは、政府が400床以上の一般病院への普及率を2020年までに90%以上にする目標を掲げており、クラウド型の導入を含めて今後の伸びが見込まれる。さらに、医療画像や検査値の情報共有を支援する分野のIT化も進んでいる。今後も情報共有の必要性が増すことで需要が高まるとみられるという。
同社では「各種の政策方針においても、医療情報システムに蓄積・集約された医療ビッグデータを活用して医療だけではなく研究やヘルスケアビジネスにも利活用する方向性が示されるなど、今後は医療情報システムや医療ビッグデータを活用したビジネスの拡大が期待される」と話している。
政府が掲げる地域包括ケアシステムでは、地域の開業医、訪問看護師、介護士など横の連携が欠かせない。現状では情報交換に時間を取られる煩わしさを嘆く医師もいるが、情報ツールの発展により医療者側の負担が減ることで患者利益につながることを期待したい。(編集担当:城西泰)