国内の小売業者がITを利用し、データ活用したいのは「既存客の来店頻度向上」

2016年02月03日 09:19

 矢野経済研究所では、国内の小売業者のITやビッグデータに関する取り組み状況について調査を実施した。調査期間は2015年11月~12月、調査対象は国内の大手小売業者、調査方法は電話によるヒアリング調査。

 まず、国内の小売業者173社(百貨店、スーパーマーケット、専門店、生協等)に、今後ITを利用しデータ活用したい業務領域に関して、選択肢から選んでもらった。最も回答が多かったのは、既存客の来店頻度向上(61.8%)となった。次がマーチャンダイジング(商品政策)で53.2%、3番目は客単価の向上が 50.3%となっている。

 逆に、O2O(Online to Offline)が11.0%、オムニチャネルの実現は15.6%と、将来的なデータ活用の課題に関しては、回答が少なかった。小売業におけるデータ活用したい業務領域としては、将来よりも日々の課題、中でも集客に対する強いニーズがあるという結果になった。

 また、小売業におけるストック情報としては、まず POS データがある。POS データは、顧客の囲い込みのために発行されたポイントカードやハウスのクレジットカードなどを発行する際に、顧客情報と紐づけられてきた。さらに、GPSなど各種センサデータ、ブログやSNSなどソーシャルメディアのデータなど非構造化データ等を含めたビッグデータの活用が、小売業においても今後求められていくという。

 小売業者173社に、今後のビッグデータ活用に対する考えを聞いた結果、全体では、積極的に取り組んでいるとする企業は6.9%であり、まだまだ取り組みが遅れていることが顕著になった。また、未だ取り組んではいないが、今後の重要課題であるととらえている企業は 20.2%に留まったとしている。

 逆に、課題ではあるが優先度は低いという企業は42.8%であり、取り組む予定はなしの28.9%と合わせると、全体の7割以上が現状ではビッグデータの活用にさほど積極的ではないという結果になった。

 業態別に見ると、最も積極的にビッグデータの活用に取り組んでいるのは生協であるという結果になっている。2割弱の企業で積極的に取り組んでいると回答しており、今後の重要課題であるという認識も3割近くに達した。取り組む予定はなしが1割を下回っており、この結果を他の業態と比較すると、相対的に関心が高いと言えるという。生協には組合員の情報が正確にストックされていると考えられ、他の業態と比較して、顧客の顔が見えていることが分析のニーズを高めている可能性があると考えるとしている。

 百貨店については、今後の重要課題であるという回答比率が29.2%と最も高いものの、課題と認識しながら、課題ではあるが優先度は低いという企業の比率も50.0%と最も割合が高かった。また、最もネガティブな意見が多いのはスーパーマーケットとなっており、取扱い品目が近い生協と比較すると、その差が極めて大きいことは注目されるという。

 今回の調査結果によると、ビッグデータの活用に積極的に取り組んでいるとする小売業者は6.9%であり、まだまだ取り組みが遅れている結果となった。積極的に取り組んでいると回答した小売業者においても、一般的にビッグデータと言われるような非構造化データというよりも、従来から社内に多数ストックされているPOSデータや顧客関連データなどを積極的に活用しようとする取り組みが、現状においてはビッグデータ分析の中心になっているとした。小売業における IT を利用したデータ活用については、まだまだこれからの発展の余地が大きいと結論している。(編集担当:慶尾六郎)