ワイヤレス・パワー・コンソーシアム(Wireless Power Consortium/WPC) とは、ワイヤレス(ケーブル無し)で電力を供給して 2 次電池などに充電する「ワイヤレス給電(ワイヤレス充電)」技術の国際標準規格を策定する業界団体だ。2008 年 12 月に設立され、現在、20カ国、226の企業&団体が加盟している。半導体&電子部品メーカーとしては、米国のテキサス・インスツルメンツや日本のローム、東芝、ソニーなどが参加。携帯電話メーカーとしてノキアやファーウェイ、バッテリーメーカーとしてはパナソニックなどが加盟している。
WPC が最初に策定した標準規格は、最大5Wの低電力電子デバイス向け「Qi 規格(Low Power Ver1.1)」である。2010年7月に策定が完了した。Qi は「チー」と発音する。
このQi規格は、携帯電話やスマートフォンなどの電子機器に向けであり、電磁誘導方式を採用するのが一般的だ。2個のコイルを対向させて配置し、一方のコイルに電流を流すと磁界が発生し、もう一方のコイル近づけることで電流が流れる。この電力を2 次電池に充電するという仕組みだ。
4月8日(金)、東京都内のホテルで、WPCの総合展示会とセミナーを開催し、ワイヤレスパワーの業界の現況と将来について説明があった。このなかで注目すべきは、「ワイヤレス給電の市場は、2015年から毎年100%ずつ成長が見込まれ、つまり毎年倍々で伸び、2024年には年間20億個の市場に発展する」と調査会社HISが発表している点だ。
事実、現状では住宅向けのワイヤレス給電が主流だが、自動車業界ではクルマの中でスマートフォンなどにワイヤレス充電することが注目されており、トヨタやレクサス、メルセデスやアウディなどがこれを進めている。また、ハイアットやマリオットなど先進的なホテルでも宿泊客に向けてQiを採用する例が出始めている。米国ではオフィスビルの設置するすべてのデスクにQi準拠の給電システムを備えたオフィスビルが建設されたという。
現在、ワイヤレス給電の主流は5Wだが、WPCでは、さらに大きな電力の供給に向けた標準規格を策定した。現行の5W低電力電子機器向け規格と互換性のある15Wの急速ワイヤレス充電が一般的になるとした。この実用化により、タブレット端末や電子ブックリーダーなどへの適用が可能になるという。
同日の展示会場では、京都の半導体メーカー「ローム」<6963>が、スマートフォンやタブレットPCなどのモバイル機器でワイヤレス給電を実現する、 WPC Qi規格ミディアムパワーのQi認証取得済みリファレンスボードの送電側と受電側のデモを展示。これまでのローパワーワイヤレス給電規格5Wと比較して、最大3倍の速度で充電することが可能なワイヤレス給電の国際規格に準拠しており、ワイヤレス給電の更なる進化とそれらの実用化に向けて注目が集まっている。
今後、ワイヤレス給電はさらなる進展が見込まれている。独ボッシュなどは60~200Wクラスの給電を開発、パソコンなどに対応したデバイス開発を進めている。将来的には2000Wクラスのハイパワー給電で調理器具などにも採用される日が来るという。(編集担当:吉田恒)