米国自動車販売に暗雲が……。自動車向けサブプライムローンが米国経済を失速させる

2016年04月16日 20:56

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2015年暦年の米国国内自動車販売でトヨタが105.3%を達成、日系メーカーは総じて好調だった

 米国で自動車を製造販売する自動車メーカー各社の業績が非常に良い。米国内自動車産業が好調な数字を示した大きな要因は、北米自動車市場における旺盛な消費力にある。

 米オートデータの発表によると、米国2015年暦年の自動車販売台数は、1747万0499台で前年比5.7%増となった。これは、これまで過去最高だった2000年の約1741万台を上回り、過去最高記録だ。

 2015年通年の米国内メーカー別販売前年比は、米国企業3社のGMが105.0%、フォードモーターが105.3%、FCA(フィアット&クライスラー)は107.3%、日本メーカーのトヨタが105.3%、ホンダが103.0%、日産は107.1%、スバルはレガシィなどが好調で113.4%となった。また韓国勢の現代が105.0%、起亜は107.9%。高級車では、BMWブランドが前年比101.8%、レクサスが110.7%、メルセデス・ベンツは103.8%だった。

 好調な経済、長期の低金利自動車ローンやリースが提供されていること、ガソリン価格が安いことから、大型車や高級車を中心に好調な販売を持続した。車型別の販売では、ピックアップとSUVの人気が相変わらず高かった。

 ところが先日、やはり米オートデータが発表した今年3月の米国新車販売台数(速報値)は、前年比3.2%増の159万5483台だった。今年3月は販売営業日が昨年比で2日多かったにもかかわらず、前年比微増にとどまったのだ。季節調整済み販売台数とすると、2015年3月実績を下回り、米国市場の自動車販売の伸びは止まったという見方も出はじめた。事実、高級車ブランドが軒並み前年を割り込んだ。レクサスが2.8%減、BMWが12.5%減、メルセデス・ベンツは12.8%減だった。

 米国では、2007年に住宅向けサブプライムローン問題が表面化して、翌年2008年にリーマンショックが起きた。だからサブプライムというと、不動産のローンだけが対象と考えられがちだ。が、通常ローン審査には通らないような信用度の低い人に向けたサブプライムローンが自動車販売にも用意されていた。これが好調な全米の自動車セールスを支えてきたわけだ。

 そして現在、住宅ローンで起きた問題が、自動車ローンで発生し始めているというのだ。2015年に米国で組まれた自動車ローンの23.5%がサブプライム自動車ローンで、金額は約2000億ドルにのぼるという。これは過去最高額で、こうした自動車ローンの多くがリパッケージ債として投資家に販売された。

 昨年末に米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度)が利上げに踏み切った。これまで米好景気を支えてきた低金利消費者ローンが年明けから利上げとなり、米国内の自動車販売に影響が出始めたというわけだ。加えて、米ニューヨーク連邦銀行が2月になってサブプライム自動車ローンに警鐘を鳴らした。過度な長期ローン案件や、クルマの価格以上にローンを設定して余剰金を上乗せした案件などは、焦げ付きや破綻が生じやすいというのだ。なかでも変動金利で契約したローンは、想像以上に損失が広がる可能性を含んでいるという。

 このようなサブプライム自動車ローンの破綻が、過去のリーマンショックのような大きな国家的経済損失につながり、ひとり勝ちといわれた米国経済を失速させる懸念があるようなのだ。2008年のリーマンショックは日本経済にも大きな打撃を与えたことは記憶に新しい。(編集担当:吉田恒)