矢野経済研究所では、電動パワーステアリングシステムの世界市場の調査を実施した。調査期間は2015年10月~2016年3月、調査対象はEPS(電動パワーステアリング)システムメーカー、EPS構成部品メーカーなど。調査方法は同社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査を併用した。
2020年に向け各国で燃費規制の厳格化が進んでいる。従来厳しい規制が行われてこなかった米国でも2025年に向けた燃費目標が掲げられ、中国でも先進国に迫る目標が定められている。このように、地域を問わず燃費向上に向けた取り組みが求められている状況下、EPSは油圧パワーステアリングと比較して3~5%の燃費改善が図れる技術といわれ、搭載を拡大させている。
さらにEPSの標準搭載が進んでいる日本や欧州では、EPS に求められる機能が燃費向上から自動運転を見据えた予防安全の観点からも進展しつつある。国際的な機能安全規格(ISO 26262)への対応を果たしたEPSや、制御回路を 2系統化したEPS も市場投入されており、EPSの高出力化とともに、今後は自動運転時を想定し、EPS システム故障時にも操舵アシストを継続させるシステムが求められるものと考えるとしている。
そして、2015年のEPS世界市場規模はメーカー出荷数量ベースで 4,700万台、EHPS(電動油圧パワーステアリング)は400万台で、合計5,100 万台の見込であるとしている。地域別では日本、欧州での普及がひと段落しつつあるものの、北米や中国において今後の伸びが期待され、世界市場全体を牽引すると予測した。
また、南米やアジア地域を含むその他地域での市場の伸びも大きくなると考えられるとしている。EHPS については、より燃費効果の高い EPS の高出力化に伴い、今後は縮小傾向になると予測している。2015 年は 400 万台の見込だが、2025 年には 200 万台程度まで需要が低減するものと考えるとしている。
EPSタイプ別では、現状、コラムアシストタイプ(コラムタイプ)が市場の過半数を占める。コラムタイプは、低コストで搭載性に優れる特徴を持つため、小型車の多い中国、アジア地域を中心に、今後も搭載が拡大すると予測している。また、これまで欧米メーカーによる供給が中心であったラックアシストタイプ(ラックタイプ)についても、近年日系メーカー各社で開発や製品化が進められており、今後の伸長が期待されるという。
特に、ピックアップトラックや大型車の普及率が高い北米市場では、今後ラックタイプの需要が増加すると考えるとしている。(編集担当:慶尾六郎)