テクノフロンティアで見た無線通信「Wi-SUN」の実力

2016年04月23日 19:34

Rohm  Wi-SUN

テクノフロンティアのロームブースで示した“多彩な無線通信技術”のなかで、Wi-SUNの今後に注目した

 日本能率協会(JMA)は、2016年4月20日~22日の3日間、千葉幕張メッセで、メカトロニクス・エレクトロニクスの展示会「TECHNO-FRONTIER 2016(テクノフロンティア2016)」を開催した。

 今回は国内外の業界を代表する各種部品、ソフトウェア、素材メーカーなど、併設展も合せると総勢500 社超が出展。ワイヤレス給電の応用やロボティクスに応用可能なメカトロニクス関連の新しい技術が一堂に揃った。なかでも、センサー技術やその情報を活用する無線ネットワーク技術など、将来性のある技術展示が目立っていた。

 ここで京都の半導体メーカー「ローム」<6963>が展示したのが、多彩な無線通信技術だ。今後、ますます有用となってくる「IoT(モノのインターネット)」や「M2M(Machine to Machine)」における無線通信の仕様とそれぞれに適した使い方を示した展示である。

 著名なWi-Fi、Bluetoothなどはもちろん、今後の普及に期待が高まるEnOceanやWi-SUN運用に向けた技術提案が注目された。

 無線LANで構築するWi-Fiは、ギガ単位の大容量情報を素早く通信することが可能な無線で、現在もっとも普及している無線通信と言える。しかし、今後IoTなどの運用で必要とされる通信においては、障害物に脆弱なこと、通信距離の短さ(50m程度)、消費電力の大きさが大きな課題となる。

 そこで、ロームは新しい国際無線通信規格「Wi-SUN(Wireless Smart Utility Network)」アライアンスのプロモーターとして普及促進と開発を進めている。この規格が注目されたのは、昨年、国内で設置が進むとされる東京電力のスマートメーターBルート情報通信に採用されたこと。世界で100社あまりがアライアンスに参画し、各組織ともWi-SUNのスマートメーターだけではなく、その高い汎用性に期待しているという。

 Wi-SUNの高い汎用性は、いくつかの特長から推察できる。まず、周波数2.4GHzを使うWi-Fiよりも低い920MHzを使うため、Wi-Fiの50m程度の通信距離に比べて約500m(理論値上は5km)といわれる高い到達性能を持っていること。屋外でも使用できることに加えて障害物を回折して遠くまで届く。しかも、センサーを扱うネットワーク(いわばIoT)に最適なデータ量を送信することを前提に開発した通信システムなので消費電力が少なく、電波干渉も少ない。

 これらの特長により、Wi-SUNの普及は急速に進みそうだ。資源エネルギー庁は、スマートメーターの設置を2024年までに全国で8000万台という目標を掲げている。このほかWi-SUN利用が見込まれるのは、同庁が推進するゼロエネルギー住宅内のHEMS(Home Energy Management System)を運用するためのHAN(Home Area Network)を結ぶ通信だ。また、HEMSの構築と合わせて、住宅内の防犯を含めた“見守りサービス”の運用にも期待できる。そのためロームでは家庭内で簡単にWi-SUNネットワークを構築できる「Wi-SUNドングル」も開発している。

 このWi-SUN無線通信ネットワークを活用すれば、高架橋や交通インフラなどの構造物監視システム構築、広域農場などの土壌管理などにも応用できるという。(編集担当:吉田恒)