「なでしこ銘柄」に3回も4回も選ばれる企業は、女性活用のここが違う

2016年04月23日 20:43

 ■女性のキャリア形成支援で数値目標を定め、結果を出す

 第1回から4回連続で選ばれた企業は日産自動車、東京急行電鉄、KDDIの3社で、3回選ばれた企業はカルビー、日立製作所、ブリヂストン、トッパン・フォームズ、大阪ガス、ローソン、積水ハウス、ダイキン工業の8社である。

 そうした常連企業にほぼ共通して言えるのは、女性のキャリア形成支援で期限付きの明確な数値目標を設定して、結果を出していること。たとえば女性管理職の比率については、日産は「2017年までに10%」、KDDIは「2020年度にライン長200名」、日立は「2020年度に1000人」、カルビーは「2020年に30%」、積水ハウスは「グループ全体で2020年に5%、200名」、東京急行電鉄は「2020年度までに2014年度の倍の40人」と、それぞれに数値目標を掲げ、育成・登用を推進している。

 日産は2015年4月時点で国内の女性管理職比率が8.2%まで上昇し、2012年度から女性リーダーの育成・登用を本格的に開始したKDDIは2015年度の目標の女性ライン長登用比率7%を達成した。カルビーは2010年4月は5.9%だった女性管理職比率が2015年4月には19.8%に伸び、2016年4月には22.1%に達する見込みとなっている。

 役員への登用も、KDDIは2014年4月に初の女性役員(理事)が誕生し、2013年度に「2015年度までに女性役員を登用」という目標を掲げた日立は2015年4月に初の女性理事を出した。部門の中間管理職だけでなく、企業全体のトップマネジメントでも女性の活躍を期待している。

 従業員の約半数が女性で「女性の活躍なしに将来はない」と公言するカルビーは2010年度に「ダイバーシティ委員会」を新設し、多様な人材の採用と活用、社内の意識改革、女性の積極登用を強力に推進している。

 積水ハウスでは2006年に「女性活躍推進グループ」を設置し2014年に「ダイバーシティ推進室」に格上げし、女性管理職候補者研修「積水ハウス・ウィメンズ・カレッジ」を実施している。女性管理職比率は「2020年・5%」の先に、さらに大きな「10%」という目標も掲げている。住宅産業の同社の場合、管理や営業や設計・デザインの部門だけでなく、これまで「男性の職場」のイメージが強かった施工の現場にも女性の現場監督を計画的に登用・育成している。そのための「女性現場監督サポートプログラム」を実施するほか、現場に女性専用仮設トイレを設置するなど職場環境の改善にも力を入れている。「全国女性営業交流会」「全国女性現場監督交流会」のような女性だけの研修、交流会も盛んだ。

 同じ住宅産業で今回、なでしこ銘柄に2回連続で選定された大和ハウス工業も、社内公募により、事務職の女性従業員を住宅の完工・引渡後にチェックを行う「アフターサービス点検員」に職種転換させ、女性の職域をひろげている。

 4回連続選定の東京急行電鉄の鉄道事業の現場は、2000年までは女性が1人もいない「男性だけの職場」だったが、現在は駅員だけでなく車掌の約20%も女性で女性の運転士も増えている。駅施設の保守・修繕を行う建築工務部にも女性社員がいる。

 ■仕事と家庭を両立できる「ワークライフバランス」の制度

 政府では働く女性が安心して出産も子育てもできるような男女共同参画社会の実現を目指しているが、女性を管理職や役員に登用しても、昔ながらの「企業戦士の男たち」と同じ型にはめるのではなく、仕事と家庭を両立できるような職場環境が必要だ。

 日産は2015年、1日8時間勤務を意識し、時間あたりの生産性の向上を目指す働き方改革「Happy8」活動を開始し、全従業員を対象に在宅勤務制度を推進している。KDDIは仕事と育児の両立支援制度の整備、女性社員、上司への社内啓発、テレワーク勤務制度の導入などを積極的に行っている。

 また、日立は2015年度から「女性部下を持つ管理職向けマネジメントセミナー」を始めた。女性のマネジメントに関する悩みや課題を共有しながら、女性特有の葛藤やそれを解決するポイントを理解して日々の実践につなげるセミナーで、「仕事と家庭の両立」も、その課題に含まれる。

 積水ハウスでは、育児休業者、復業者、上司を対象とする「仕事と育児の両立いきいきフォーラム」の定期的開催、男性の育児休暇「ハローパパ休暇」の取得促進を図っている。育児休業者には復帰後の活躍にスムーズにつなげるプログラムを用意。自分磨き休暇、孫休暇、ヘルスケア休暇、アニバーサリー休暇、ボランティア休暇など「スマートホリデイ」制度で有給休暇の取得促進を図るほか、育児や介護による休業、短時間勤務など時間的制約のある従業員を上司が公平に評価できるよう、制度面、意識面のサポートも進めている。

 「なでしこ銘柄」の主要な選定基準は、人材の多様性を企業の活力につなげていく戦略「ダイバーシティ・マネジメント」の観点に立って、「女性のキャリア形成支援」とともに「仕事と家庭が両立できるような支援」も推進していること。その片方だけを充実させても選ばれない。女性のキャリア形成を進める一方で、「ワークライフバランス」の実現にも力を注いでいるのが「なでしこ銘柄」常連企業の特徴と言えるだろう。(編集担当:寺尾淳)