安倍信三首相が実施した内閣改造で、「女性活躍担当相」として有村治子氏が選ばれた。政府は人口減少に向けて女性の活用を促進していく方針で、「女性活躍」と「男女共同参画」を掲げ、少子化の解消と女性雇用の拡大を合わせて進めていくとしている。有村氏は日本マクドナルド<2702>の出身。女性活用対策を担うほか、国家公務員制度や消費者・食品安全、規制改革、行政改革などの分野まで兼任する。女性の活用は経済政策の一環であるという意味合いを強調する上でも、安倍政権にとっては重要な役割となる。
しかし国民の間からは「女性活躍担当相」という耳慣れない呼称に対して、「女性は政策がないと活躍することができない社会なのか?」と違和感を訴える声もあがっている。有村氏は会見で、「女性が輝く社会を作っていきたい」と語り、そのためには「男性の賛同者を増やし、男性と女性の両方にとってメリットのある社会を目指して行かなければならない」と述べた。
諸外国と比較しても日本は女性管理職が圧倒的に少ない。女性は結婚や出産などライフステージによって離職や転職を余儀なくされるケースも多い。女性の再雇用や、キャリアアップには、企業の協力が不可欠となる。しかし育児休業制度を取得しにくい空気が流れる職場環境や、女性であるというだけの理由で昇進が困難な組織体制を持つ会社も依然として目立つ。企業の自主性に任せているだけでは限界もあり、古い慣習を打ち壊し、再構築を図るためには、1986年に施行された男女雇用機会均等法に次ぐ抜本的な法整備も新たに必要となるかもしれない。
また少子化対策のためにも、出産や育児と仕事を両立させたいと願う女性の支援策の強化も課題だ。人材不足を補うために女性雇用の拡大を目指すのなら、働きながら安心して子育てができるように、社会の受け皿の用意が大前提となる。
少子化対策と女性雇用促進は表裏一体だ。その意味でも参考となるのがフランスだろう。フランスの出生率は90年代に1.70台まで落ち込んだが、2006年には2.00まで回復。直近の12年では2.01となっており、女性の就業率も85%と高い。家族手当などの支援が手厚いことや託児施設の配備に加えて、短時間勤務制度の充実を図ったことが貢献しているようだ。女性自身が自分のライフスタイルに適した労働環境を選択できるような施策が日本でも求められているのではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)