2016年1月29日から導入された日銀のマイナス金利政策の影響にあわせて、金投資を始める個人投資家が増え始めた。田中貴金属工場の資産用地金の取り扱い量の発表によると、16年1月?3月の金地金の販売量は前年同月比34.9%プラスの8192キロと急増し、買い取り量は23.8%マイナス6239キロにとどまった。不透明な政策案に不安を感じ、今までとは違う形での資産形成をと考える人が増えたのだろう。
しかし、金は金融不安や戦争などの世の中のバランスが不安定な時に「安全資産」として買われてきたが「金=安心」といわれればそうではない。1990年から2000年にかけて、20年もの間穏やかに価値が下がり続けていたのだ。
01年からリーマンショックや9月11日の同時多発テロ等の影響で金価値は上昇したが、20年間の金価格減少の影響で年間金生産量がついていけず、08年までは減産傾向にあったのだ。09年頃になって金の必要性が世界中に浸透し、金を生産する為の運転資金への心配も解消され、今までの不調が嘘のように金は増産された。
振り返ってみると、一昔前のいわゆる「バブル期」では、郵便貯金、銀行貯金ともに高い金利が付いており、預けているだけでお金が増え、金利だけで食える時代であったが、現実に起こっていたことなのかと疑いたくなるような現状である。日本は1992年から金利が1%以下で推移。12年からはアベノミクスにより景気は上昇傾向にあるが、銀行の普通預金金利が1%を超えるには、まだまだ時間がかかると言われている。
何があるか分からないこの世の中、金は実物資産、無国籍通貨であり普遍の価値がある。印刷して増やせる通貨とは違い、生産性に限りがあり、希少性が高いため、ニーズが途絶えることはないと言われている。
自分の資産を守り増やす為の色んな手段として、インフレヘッジの機能を持つ安全資産といわれる「金」。世界中の脚光を浴びるほどに、人々が抱える先行きへの不安が大きいものだと感じさせられる。(編集担当:久保田雄城)