満を持してのマイナス金利導入 しかしそれは逆効果か?

2016年03月18日 08:34

 2016年1月29日、日銀は日本の歴史上初のマイナス金利導入に踏み切った。マイナス金利導入は、物価上昇期待をもたせ、円安や株高に貢献するという見通しのもとに実施された。

 中央銀行がマイナス金利を導入するという動きは、日本だけに限られたものではない。外国を見渡せば、EU(欧州連合)の中央銀行であるECB(欧州中央銀行)を始め、スイス、スウェーデン、デンマークの各中央銀行も、マイナス金利の導入に踏み切っている。

 しかしながら、原状ではその効果は十分とは言えないだろう。むしろ、逆効果を招いている可能性もある。日本ではマイナス金利の導入後、期待した株高や円安の動きは出ていない。日経平均は足踏みをしたままだ。物価に関しても、かえって物価予想を押し下げているという見方もある。これには、2通りの理由が考えられるだろう。

 第一に、マイナス金利そのものが、銀行の収益性に打撃を与え、経済全体にも悪影響を与えてしまう可能性がある。マイナス金利導入によって、住宅ローン金利や預金金利は引き下がり、銀行が得る利ザヤを圧迫してしまうのだ。実際、みずほフィナンシャルグループ(8411)は、従業員の賃金を引き上げる「ベースアップ」を見送ったと報道された。こうした動きは、一般市民にも悪影響を与え、ひいては経済全体に逆効果を与える可能性があるということだ。

 第二に、金利や債券利回りがマイナスまで下がると、予想インフレ率を予想する指標も一緒に下がる、といった技術的な問題もある。再度確認するが、日銀を始め、各国の中央銀行が目指すのはこの予想インフレ率の上昇、すなわち物価の上昇である。実際、ECBが昨年12月に当座預金金利のマイナス幅を深くして以来、2020年から25年の平均インフレ率を予想する「5年後の5年間のブレーク・イーブン・フォワードレート」は一時、1.36%まで下がった。

 このように、経済への悪影響の可能性や、中央銀行が目標としているその指標自体に問題があるなどの指摘があるのだ。しかしながら、冒頭で述べたように、マイナス金利の導入は日本の歴史上初めてのことであり、過去のデータから結果を推測できない分野でもある。「やってみないと分からない」のだ。

 この日銀の世紀の大実験は、はたして吉とでるか、凶とでるか。今後も注目していく必要がある。(編集担当:久保田雄城)