航空エンジンの羽根、耐摩耗性を5倍に IHIの技術と歴史に迫る

2016年05月06日 08:49

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日本のジェットエンジン生産の6~7割を担うIHI。この度、米ボーイング777用エンジン「GE90」の部品に、三菱電機<6503>と共同開発した放射表面処理技術(MSC)が適用されることとなった。

 日本のジェットエンジン生産の6~7割を担うIHI<7013>。幕末以来160年超の名門企業で、防衛省で使用する航空機の多くのエンジンが同社製である。長きにわたって日本の工業技術を牽引してきたわけだが、この度、米ボーイング777用エンジン「GE90」の部品に、三菱電機<6503>と共同開発した放射表面処理技術(MSC)が適用されることとなった。

 MSCは放射加工による皮膜形成技術により、耐摩擦性・耐熱性優れた機能性皮膜を形成でき、耐摩擦性が従来比およそ5倍にまで高まる。三菱電機が開発した専用の放電表面処理装置は簡単に生産ラインに導入できるという。

 MSCはすでに稼働する同エンジンの修理時、今後生産する部品にも適用され、修理では米ゼネラルエレクトリック(GE)に対してMSCをライセンス供給する。また、GEに対し三菱電機が同装置を納入し、IHIがコーティング用部材の供給と技術指導を行うとした。

 IHIは現在、産業や社会を支える様々なプラント、機械、設備から、暮らしの身近にある設備まで、多彩な製品を提供しているが、同社の出発点は、遡ること1853年(嘉永6年)、江戸幕府に命じられた水戸藩が現在の東京都中央区佃二丁目に造船所を創業したのが始まりで、西洋式軍艦「旭日丸」「千代田形」などを建造した。

 1877年には、民間造船所として日本で初めての蒸気船「通運丸」を建造、その後は第一次世界大戦での船舶特需によって莫大な利益を手にし、現いすゞ自動車<7202>の前身となる自動車部門に投資。1945年には日本初のジェットエンジン「ネ-20」を製作、石川島重工業株式會社と株式會社播磨造船所が合併し、石川島播磨重工業株式会社となった後も、当時世界最大のタンカー「日精丸」就航するなど、常にトップを走り続けてきた。

 ところが、社名を現在のIHIに変更後、一時は特定注意市場銘柄に指定され、今年2月には3回目の下方修正で300億円の最終赤字に転落。投資家の信頼が揺らぐ中、この度の明るいニュースも手放しに喜べないのが現状だ。(編集担当:久保田雄城)