16年の呉服小売市場規模は前年比0.9%増の2,830億円に

2016年05月06日 08:17

 矢野経済研究所では、国内呉服市場の調査を実施した。調査期間は2016年1月~3月、調査対象は呉服関連メーカー、呉服関連卸売業、呉服関連小売業等。調査方法は、同社専門研究員による直接面談、郵送アンケート、及び文献調査を併用した。

 2014年の呉服小売市場規模は前年比94.9%の2,855億円であった。2014年は消費税増税の駆け込み需要があったものの、4月以降はその反動で店頭の来店客数の減少と催事販売が落ち込んだ。

 2015年に入り全国で店舗展開するナショナルチェーンによるオシャレ着物専門店や男物専門店、ユニセックス着物専門店などの新業態店舗の開発が活発化したが、引き続き増税後の消費低迷に悩まされた企業も多く、全体としては厳しい状況となった。2015年の市場規模は前年比98.2%の2,805 億円であった。

 2016年はようやく増税後の影響も緩和され、回復の兆しがみえると考えられることから、2016年の呉服小売市場規模は前年比で100.9%の2,830億円と堅調推移を予測している。呉服小売市場全体の縮小傾向が続く中、小売店各社とも着物を着る機会を創出するための企画を積極的に展開しているという。特に都市部においては、歌舞伎や大相撲、落語など、着物との親和性の高い和文化関連のイベントが行われる機会が多く、雑誌社と共同で、着物を着てこうしたイベントに出かける企画や、着物で女子会を開催するなどの取り組みが活発化しているとしている。

 また、呉服小売市場をチャネル別に見ると、2015年は直販・インターネット通販、リサイクル販売、催事・訪問販売、その他チャネルが好調であった一方、これ以外の呉服販売チャネルは不調であった。一般呉服店チャネルは、顧客への手厚いサービスで売上を伸ばす店舗がある一方で、後継者不足による廃業や、ローカルチェーンに吸収される店舗もあり、明暗が分かれた。

 チェーン専門店チャネルは、各地域のローカルチェーンが依然として店舗拡大を続け、大手全国チェーンを牽引するかたちで堅調に推移した。催事・訪問販売チャネルは長らく縮小基調であったが、催事回数の増加や催事規模の拡大が見られ、ここにきてようやく下げ止まり感がでてきた。今後は横ばいで推移すると考えるとしている。

 百貨店チャネルは、2014年4月の消費税増税の影響が 2015年上半期まで続いていた。下半期に入ってからようやく回復に向かったものの、上半期の落ち込みを補填しきれず、通期では前年を下回る結果となった。直販・インターネット通販チャネルは、低価格帯商品や浴衣(ゆかた)、小物類といった呉服関連商品が好調に推移した。インターネット通販専門店が実店舗を出店するケースもみられ、今後の成長が見込まれるとしている。

 リサイクル販売チャネルは百貨店にテナントとして出店する企業が売上を伸ばしており、2015 年も引き続き堅調であるという。その他チャネルは、主に着付教室等での呉服販売と、量販店や総合衣料店での販売が含まれる。着付教室は一時期、盛り上がりをみせ、大手全国チェーン専門店、一般呉服店でも「着付」を販促として利用する店舗が増加していたが、最近は一段落しているとしている。(編集担当:慶尾六郎)