中東で多くの患者が発症しているMERSウイルスの感染の検査方法が開発された。従来では2~3時間かかった検査が15分程度で判定できるようになることにより、患者の負担を軽減することに開発者は意欲を示している。
MERSウイルスに対し、現時点でも未だ特効薬は発見されていない。しかし、このウイルスを短時間で検出出来る方法を横浜私立大学と試薬メーカーの関東化学が発表した。これまでに2時間から3時間程度かかっていた検査時間が15分程度まで圧縮される形となる。
2012年に確認されてから、MERSの患者は中東地域を中心に感染が拡大している。日本人に未だ発症例はないものの、中東に滞在し帰国した後に発症した例はアメリカ、ヨーロッパ、アジア各国などで多く見られている。
主として、発熱や咳、息切れといった急性で重症な呼吸器の症状がみられる。下痢や腎不全などの症状をきたす患者も見られ、高齢者や基礎疾患がある患者は重症化するケースが多い。報告されているMERS感染者の致死率は約36パーセントと極めて高いことからも危険なウイルスであることは間違いない。
感染経路は動物から人間、または人間から人間と言われているが明確な感染源が解明されていない。予防対策としてはラクダなどの動物や感染者との接触を避け、規則正しい手洗いを行うこと、未処理の食品を摂らずに加熱処理を行うなどの方法があげられる。
感染してしまった場合には早急な対応が必要だ。MERS治療にはワクチンや専用の治療方法が確立していない。患者の臨床状態に基づき、指示療法で対策を取っているのが現状だ。
そのため、感染者の早期発見が必要とされている。しかし、今までの検査では時間がかかりすぎており、患者の負担も大きかった。検査は症状がみられる患者の痰や鼻汁を溶かした検体をキットに数滴垂らすという方法で行われる。妊娠検査薬に似ており、ウイルスが検出された場合は赤い線が出る仕組みだ。
検査キットの開発に先立ち、横浜市立医学研究科の梁明秀教授をはじめとする研究チームはMERSのウイルス特有のタンパク質を大量に高品質で作ることに成功。このタンパク質を抗原に精度の高い検査キットが作成された。
こうした検査キットを使い検査結果が迅速にわかることで、感染防止に繋がることに期待が寄せられている。(編集担当:久保田雄城)