矢野経済研究所では、国内製薬市場の調査を実施した。調査期間は2015年4月~2016年3月、調査対象は製薬企業、医薬品卸、医療機関、薬局、行政当局、学識経験者など。調査方法は同社専門研究員による直接面談、ならびに文献調査を併用した。
同社は、厚生労働省の「平成26年薬事工業生産動態統計年報」の医療用医薬品の2014年生産高に輸入品を加えた確定値を基に、2015年から2023年までの生産高を予測した。予測は、医療制度改革や薬価制度の見直しが医療用医薬品需要に及ぼす影響度合いにより、ケースⅠとケースⅡの 2 種類の予測値を算出した。
ケース1は、医療制度改革や薬価制度の見直しが医薬品需要に影響を及ぼし、ジェネリック医薬品の数量ベースシェアが2020年頃までに80%に達し、市場は新薬かジェネリック医薬品かという構造を持つことを想定して算出した。わが国を含む先進諸国においては、今後も医療費の抑制が行われることになるものと予想した。特にわが国においては、国家財政が逼迫している状況下において、急速な少子高齢化の進展にいかに対応するかということも避けて通れない。そのため、診療報酬及び薬価等改定時はもちろんのこと、それ以外の期間においても医薬品の使用に一定の制限がかかる可能性があると考えるとしている。
だが、このように製薬企業を取り巻く環境が厳しくなるとしても、産業育成という観点により新薬創出加算制度が恒久的なものとなれば、成長の下支えがこれまで以上に確実なものとなる。このようなことから、2015年には9兆3,968 億円、2019年には9 兆9,651億円、2023年には9兆7,587億円と予測した。
一方、ケース2では、製薬企業の努力によって医療制度改革や薬価制度の見直しを上回る医薬品需要拡大が見込まれ、長期収載品(ジェネリック医薬品のある先発品)は段階的に消失するものの、時間をかけつつ市場は変化を遂げるとして算出した。その結果、医療用医薬品生産高(輸入品を含む)は2023年には12 兆1,234億円になると予測した。
2016年4月から実施された薬価改定では、C 型肝炎治療薬が特例拡大再算定制度の対象品目となったことから、大幅な薬価の引き下げを受けた。これは、薬価が高額となる新薬が一気に売上規模を拡大したことによる。世界的に、今後もがん免疫療法剤など薬価が高額となる新薬が発売される傾向にあり、がん以外にも患者数が増加するとされているアルツハイマー型認知症や2型糖尿病、神経疼痛などに対する治療薬が発売されれば、ファースト・イン・クラス(画期的な新薬)として成長する可能性があると考えるとしている。(編集担当:慶尾六郎)