中国経済への集中リスクが懸念される中、経済成長に加え政治・経済・社会の安定化が進むASEAN(東南アジア諸国連合)地域への関心が高まっている。とくに、市場規模と今後の成長性、投資環境の改善などを背景に、不動産事業者の注目度は高い。
日系不動産事業者のASEAN地域への進出は、1980年代から頻繁に行われたが、90年代前半あたりから徐々に下火になった。しかし近年になってまた、ASEAN地域への世界的な注目の高まりとともに、再進出を含めた動きが目立っている。
不動産事業と一口にいっても、その事業内容は様々で多岐にわたる。分譲住宅の開発や販売、さらにはオフィスビルや商業施設、ホテルなどの大型不動産の賃貸・運営にいたるまで、ASEAN地域で総合デベロッパー事業を積極的に展開しているのは、三井不動産<8801>や三菱地所<8802>、東急不動産<3289>だ。
また、積水ハウス<1928>やタマホーム<1419>、トヨタホームなどの大手住宅メーカーは集合住宅、積水化学工業<4204>やパナホーム<1924>は戸建て住宅の建築請負を中心に事業展開を行っている。
例えば、パナホームは昨年、ASEAN地域の中でもタイと並んで市場安定期にあるといわれるマレーシアで、現地開発事業者のMKH株式会社の建築請負を目的に連結子会社パナホーム MKH マレーシアを設立し、積極的な事業展開を始めているが、4月中旬には早くもシャーアラム セランゴール州において「Maple @ Hillpark Shah Alam North」プロジェクトとして敷地面積161510平方メートルの土地に2階建リンクハウスの戸建住宅(約500戸)の建設を開始。さらに、プチョン セランゴール州でも住戸305戸、30店舗からなる複合型マンションを建設する「SAVILLE @D’LAKE PUCHONG」プロジェクトもスタートしている。
今回、両プロジェクトではスケルトン+インフィル一体提供による新しいくらし価値の創出が共通のテーマとなっており、戸建住宅の建物躯体にはパナホーム独自のASEAN地域向け「W-PC構法(ウォール・プレキャスト・コンクリート方式)」を採用。また、室内には躯体・設備・家電を一体とした「リビング デザイン パッケージ」というソフト提案や、同社独自の換気システム「PURETECH(ピュアテック)R」を組み合わせることで、ジャパンクオリティの住まい提案を行っていく。
シンガポールなどの業者が先行していることなどもあり、日系不動産事業者がASEAN各国に単独で参入するのは難しいといわれる中、現地企業と協業する業者が増えている。パナホームがMKH社との協同で進めているこの大規模なプロジェクトが成功すれば、同社のみならず日系不動産業者全体の、ASEAN地域進出への大きな弾みとなるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)