家電の自動化・高機能化を支える日本の技術力

2016年03月05日 19:13

マイコン

環境対応性に優れた高機能マイコンの需要が高まる中、ロームグループのラピスセミコンダクタが、16bitローパワータフマイコンの評価用リファレンスボード「RB-D620Q15x/13xシリーズ」を開発、2月より販売を開始した。

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済が、主要白物家電及び小物家電35品目の世界市場を調査してまとめた報告書「グローバル家電市場総調査 2015」によると、2014年の家電市場は、中国をはじめとする新興国の成長の鈍化や長らく低迷を続ける欧州経済の影響を受け、前年比微増の23億5513万台に留まったものの、インドやインドネシアなどの新興国の成長に伴い、15年以降の市場は拡大傾向が見込まれており、2019年には26億2907万台にまで増加すると予測している。とくにASEAN経済共同体(AEC)の発足などで注目される東南アジアは今後、消費面でも生産面でも重要になってくるだろう。

とくに生産面では、現在は中国が8割を占めているが、人件費の高騰などを背景に東南アジアへのシフトが進んでおり、徐々に比率が高くなっている。

 日本での生産割合は、残念ながら1.3%程度しかなく、中国や東南アジア各国には遠く及ばないものの、日本の強みは生産力や人件費ではなく、技術力にある。

 近年は、日本国内の市場のみならず、快適さや利便性の追求から、白物家電の自動化、高機能化が急速に進んでいる。しかし、洗濯機や乾燥機、冷蔵庫などの家電は、産業機器同様、モーターやコンプレッサ、ヒーターなどでノイズが発生したり、高温環境になったりする機器も多く、機能を制御するマイコンには、電源ノイズや高温環境下での安定動作が高いレベルで求められる。中でもキッチンで使用される家電は、同じ電源ラインで動作するものも多く、システムレベルでのシールド付加など、電源ノイズへの対策が必須となる環境だ。

 マイコンベンダとしては、自動車分野で世界トップシェアであるルネサスエレクトロニクス<6723>が有名だが、こうした白物家電や産業機器などのニッチな市場で注目が高まっているのが、ローム<6963>グループのラピスセミコンダクタ社の「タフマイコン」だ。

 このたび同社では、アプリケーションの多様化、開発サイクルの短期化に対応するため、量産中の16bitローパワータフマイコン「ML62015x/13x ファミリ」を搭載したリファレンスボード「RB-D620Q15x/13x シリーズ」を開発、2月より販売を開始した。同シリーズは、電源電圧やROM容量など用途に応じた6種類をラインアップし、エミュレータを介してPCに接続するだけで、プログラムの設計、評価、ROMコード書き込みまで一貫した開発が可能になる。また、パッケージソケットを装着するための実装スペースも準備、パッケージソケットを利用すれば簡単な書き込みツールを自作することも可能だ。

 スピードが求められるセットの開発者にとって、設計負荷が少ないかというのは、今後さらに重要なポイントとなってくるだろう。部品メーカーにとっては、製品の優位性だけでなく、快適な開発環境を整備することも差別化のポイントになるのかもしれない。(編集担当:松田渡)