生産拠点から消費圏へ 世界が注目するインドネシア市場

2016年06月05日 19:54

 2015年末に発足した「ASEAN経済共同体(AEC)」により、ヒト・モノ・カネの動きが自由化したことで大きな経済発展が注目されている東南アジア。中でも、ASEAN加盟国の中で最多人口約2億5千万人を誇り、中間・富裕層の割合も増加中のインドネシアは、日本のみならず欧米各国からも熱い注目を集めている。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)・ジャカルタの調査によれば、2014年3月時点の日系企業の進出件数は1496社。例えば、トヨタ自動車<7203>、ダイハツ工業<7262>、三菱自動車<7211>、などの自動車関連企業をはじめ、ホンダ技研<7267>、スズキ<7269>、ヤマハ発動機<7272>などのバイク関連企業、パナソニック<6752>、シャープ<6753>、エプソン<6724>などの電気関連企業などが進出している。

 とはいえ、急激な発展に伴って様々な問題も山積している。例えば、人件費の高騰、インフラの整備不足、法制度の未整備などが挙げられるが、中でも切実なのが慢性的な住宅不足だ。インドネシアの年間の新設住宅着工戸数は日本の約2倍程度と推定されているが、それでも足りていないのが現状だ。しかも、施工不良による雨漏りやひび割れなど、品質の悪さも改善すべき大きな課題となっている。

 そんな中、パナホーム<1924>の100%子会社でシンガポールに本社を置く「パナホーム アジアパシフィック」は、インドネシアのゴーベル・グループ傘下の「ゴーベル インターナショナル株式会社」と、JV会社「パナホーム ゴーベル インドネシア(仮称)」の7月1日の設立に向けて合意した。

 パナホームとゴーベル・グループは、創業者である松下幸之助氏の時代より55年来、インドネシアでのパートナー企業として家電製品・住宅設備などの製造・販売を手がけてきた。
 
 今回の新会社設立は、パナホームのASEAN地域の事業展開を加速させる目的だけでなく、同社の技術やノウハウとゴーベル・グループの現地ネットワークを融合させ、インドネシアの風土や文化に根ざした住宅を供給することで、インドネシアにおける住宅問題の解決を図り、同国の住生活文化発展への貢献を目指す。

 インドネシアはかつて、日本企業にとっては生産拠点という位置づけであった。しかし今やASEANの目まぐるしい発展の中で大きな消費圏に変貌しつつある。国内の消費者をターゲットにビジネスを展開しようと思えば、現地企業の持つネットワークと密に連携し、消費者の理解を得ることは必須だ。世界から注目されるASEAN市場で日本企業が大きなシェアを獲得するためのビジネスモデルという面でも、パナホームの新会社の成功には期待がかかる。(編集担当:藤原伊織)