日本国内において、かつては繁栄を極めたテレビ用液晶産業だが、9月末にはパナソニック<9752>の唯一の生産拠点である姫路工場での生産が終了し、国内で生産を続けるのはシャープ<6753>だけになる。
同産業の歴史を振り返ると、2003年からのデジタル放送開始に伴うテレビの買い替え需要に合わせて、一般家庭に薄型テレビが急速に普及したわけだが、当時はプラズマテレビと液晶テレビが主流であった。01年に発売開始された「AQUOS」は、まさに液晶テレビの代名詞とも言える存在で、08年度の日本国内シェアは42%前後で堂々1位。しかし、この頃からすでに海外販売で遅れをとり、07年の世界シェアはサムスン電子が1位(18.9%)、ソニー<6758>が2位(13.9%)、シャープは3位(9.5%)であった。
パナソニックの「VIERA」は、11年度の液晶テレビ(40インチ未満)の年間シェアが国内で15%前後の3位。プラズマテレビは年間シェアが約74%で1位と、他を圧倒していた。しかし、プラズマテレビは液晶の低価格化や技術の進歩に伴って衰退。同社は05年に兵庫県尼崎市のプラズマパネル工場を稼働させるも13年に生産を終了し、そして16年には液晶からも身を引くことになる。
液晶パネルの生産を開始した当初、同社は薄型テレビの需要拡大に対応すべく、07年1月に250万台/年、同年9月には500万台/年、そして08年7月には600万台/年(台数はいずれも32型換算)に引き上げたほどだ。08年2月に姫路工場を建設、10年に稼働開始後、13年度までに1500万台/年の生産能力を持たせる予定とし、先行きが明るいように思われたが、韓国などの海外勢との競争が激化。12年3月期には765億円の営業赤字を計上した。
現在、姫路工場の従業員は約1000人いるという。人員削減は行わず、数百人規模で自動車用蓄電池などに配置転換する方針だ。残るは、シャープの亀山工場(三重県亀山市)と、台湾の鴻海精密工業との合弁会社(堺市)。激動の十数年を振り返り、寂しさを覚えるのは筆者だけではないはずだ。(編集担当:久保田雄城)