「熊本県の被災地では未だ多くの方が避難生活を余儀なくされている。参院選挙の準備だけでもご苦労をお掛けする状況なので、こうしたことも考慮し、同じ国政選挙である『参院選挙で信を問う』ことにした」。総理記者会見での発言。
安倍晋三総理は消費税増税の2年半先送りの記者会見で、衆院解散で信を問わず、参院選挙の改選議席過半数を与党で獲得することで、国民に信を得られたと判断する。そのうえで消費税増税を2019年10月に10%にするための関連法案を秋の国会に提出、成立させるとした。
衆院解散、総選挙を行えば、自民党が衆院で現有する291議席が大幅に減ることは確実で、現有議席を維持することを優先選択したというのが、ダブル選挙を避けた本当の理由だろう。また野党側にもダブル選挙を望んでいなかったことがうかがえる。
安倍総理が「同日選挙について、先ほど国民の信を問いたいと申し上げましたが、今週に入って、野党から内閣不信任案が提出されるということに至りました。その中において、内閣不信任案でありますから、内閣は総辞職せよということなのだろう。それは当然、民進党の岡田克也代表はどういうわけかおっしゃらなかったのですが、解散を求めるという意味もあったのかなと思いますから、その時に衆議院を解散することについて、私の頭の中を解散についてよぎったことは否定いたしません」と述べ、内閣不信任案の趣旨説明で、岡田代表が「衆院解散・総選挙」を口にしなかったことに「どういうわけか、おっしゃらなかった」と疑問視した。
山本一太元沖縄北方担当大臣(参院議員・自民)は「民進党の岡田克也代表が『総辞職だけを求め、解散総選挙を要求しなかった』ことに唖然とした。死に物狂いで政権を奪還しようという覚悟も、意志も、迫力も感じられない。ここまで野党が弱々しいと『民主主義的にどうなのかな?』とまで思ってしまう。(苦笑)」と酷評した。ある種、当然だ。
求めるのは自民・公明の新内閣ではないはずで、政権奪還による民進党を軸にした新内閣だろう。衆院解散・総選挙をなぜ、強く主張しなかったのか。
3年半前の安倍自民党総裁と野田佳彦総理の党首討論で、安倍総裁は強く衆院解散・総選挙を求め、野田総理は国会議員定数を削減する身を切る改革をやることを安倍総裁に確約させて、衆院解散を断行した。同じことを、岡田代表は求めるべきであった。実現したかどうかは分からないが、少なくとも、安倍総理や山本議員に指摘されるようなことは、政権奪還をめざす野党第1党党首に、あってはならないことだ。
国会での政治勢力が一定のバランスを有することは健全な民主主義、民意反映には欠かせない。安倍総理が今回の参院選で国民の信を問うとしている以上、与野党は、その認識のもとで結果を出して頂くことを期待する。
つまり、今回の選挙結果は自民の衆院での現有議席の発言力をより強めることになるのか、野党が議席以上に発言力を持ち得るかがかかった選挙になる。安保法制の是非を問う選挙になることも忘れてはならない。重要な選挙だ。
参院選挙の改選議席は選挙区73(うち1人区は32)、比例代表48。6月22日に公示され、7月10日投開票される。
安保法制・原発・アベノミクスの是非が最大の争点になるほか、憲法9条改正の是非も視野に入れた選択が有権者に提起されている。有権者は自ら政治に意思表示できるこの機会を無駄にせず、選挙権を行使することが大事だ。(編集担当:森高龍二)