2011年6月にサービスを開始したLINEが、わずか5年1ヶ月という異例の早さで日米同時上場を果たすことになった。米Facebookの8年3ヶ月、米Twitterの7年8ヶ月を上回るスピードである。日本企業が東証とNYSEに同時上場するのは初めてのことで、東証上場予定日は7月15日。
上場に伴って国内1,300万株、海外2,200万株を公募し、オーバーアロットメントでの売り出しは525万株で、発行想定価格の2,800円で弾き出すと公募で約980億円を調達できることになる。
同社のコミュニケーションアプリ「LINE」は、全国230以上の国と地域で利用されている。全世界での累計登録ユーザーは10億人を超え、3月末時点の月間アクティブユーザーはグローバルで前年同期比7%増の約2億1,840万人に上る。LINEの繁栄を後押ししたスタンプの総数は2月末時点で258,000セット以上、2015年度における年間スタンプ売上総数は253億円に達した。
現在はスタンプのみならず、ゲームや漫画などのコンテンツや販売、広告事業や決算事業を展開している。直近では、今夏を目処にMVNOとして格安通信市場に参入すると発表し、月額500円からという業界最低水準の料金を予定。既存のMVNOの脅威になりえると話題だ。
とんとん拍子に見える同社の大躍進。だが、10日に同社が関東財務局に提出した有価証券届出書によると、純損益が赤字であることが判明した。非上場のため、これまで詳しい財務データや役員報酬などを開示していなかったわけだが、15年12月期決算は国際会計基準で売上高が前年同期比39%増の1,206億円に対し、純損益の赤字が79億円に達している。15年3月に買収した音楽ストリーミング事業の不振で、撤退などに伴って発生した118億円の損失が痛手となった。
また、福岡市博多区に自社ビル(地上11階、地下2階建)の建設を計画していたが、断念したことが5月にわかった。15年10月の完成を目指すも、建設関連費の高騰で困難になったとし、着工を延期。ビル建設のために取得した土地は売却する方針で入札を実施している。
さらなる事業拡大を図る上で、新たな挑戦と失敗は付き物だが、失速を招くわけにはいかない。同社としても日米同時上場で成長に拍車をかけたいところだろう。(編集担当:久保田雄城)