情報通信技術を活用して医療や介護にあたる遠隔医療は、これまで専門医師による他の医師の診療支援や、過疎地や離島などの遠隔地の患者の診察を中心に使われてきた。しかし新たな流れもある。今年の1月からサービスを開始した「小児科オンライン」も、子育て家庭のニースをくみ取った新しい形の遠隔医療サービスの一つだ。
このサービスでは、月額980円で加入する会員に医療相談を提供する。利用者はまず予約をとり、スマートフォンなどを通して1回15分まで、子供に関する心配事や、病気の症状についてアドバイスを求めることができる。交代で窓口をつとめるのは、現役の小児科医師たちだ。
この遠隔医療相談では、現段階では診断書や薬の処方は受けられない。利用者にとって何がメリットなのだろうか。実はこれまでの相談では、夜間救急に子供を連れて行くべきかどうかの問い合わせが多数あったという。
夜間に子供が発病すると、近くのかかりつけの病院は閉まっていて、離れた救急病院に行かなければならないことが多いだろう。また夜間救急は、込み合っていて診察まで長く待つことも珍しくない。子供を病院に連れて行く親にも負担がかかるし、病気の子供にも、症状によっては家で寝ていた方が体への負担は軽いかもしれない。しかし、正確に自分の症状を説明できない子供のこと、親がつい過剰に心配してしまうのも仕方がない。
小児科オンラインの代表をつとめる橋本医師がこのサービスを始めるきっかけとなったのも、自身が小児科の救急患者を担当した経験だという。救急患者で込み合う病院では、どの患者が重症で、誰を優先して診察するべきかを判断するプロセスにも人手や時間がかかっていた。この問題を改善できないか、という思いが、小児科オンラインのアイデアにつながったという。
このサービスを支えているのは映像技術の進歩と普及だ。利用者は、LineやSkype,テレビ電話などで、必要に応じて患者の写真や動画を送り、対応のアドバイスを求めることができる。小児科オンラインの医師が触診や聴診が必要と判断した場合には、医療機関での診察を勧める。軽症であれば、過程での適切な処置をアドバイスする。
昨年より遠隔での医療行為が実質的にほぼ解禁された。小児科オンラインでは、将来的には診断書や薬の処方などの診察行為の提供も視野にいれながら、子育てをする親を支援するサービスを続けている。(編集担当:久保田雄城)