5月の「チャイナリスク」関連倒産は10件 負債総額は190億2,600万円 

2016年06月23日 08:37

 東京商工リサーチによると、5月の「チャイナリスク」関連倒産は10件、負債総額は190億2,600万円で、件数、負債ともに前年同月を上回った。5月10日に、金属スクラップの回収、販売を手掛ける木村メタル産業が、中国の需要減退を背景とした銅相場の下落による売上急減で、38億800万円の負債を抱えて名古屋地裁へ破産を申請するなど大型倒産が発生し、負債総額を押し上げた。

 2016年1月-5月累計は53件で前年同期31件から1.7倍(70.9%増)となった。形態別では、破産と特別清算の消滅型倒産が45件に達し、前年同期22件から2倍以上の水準に及んでいる。会社更生法と民事再生法の再建型倒産は1件(前年同時期3件)、私的倒産は7件(同6件)にとどまった。「コスト高」(33件)や「価格競争」(11件)を要因とするチャイナリスクは、企業の事業構造の根幹を直撃し、体力の乏しい中小企業は中長期的な再建策を描くことが難しい事態に追いこまれているとしている。

 倒産に集計されないが事業停止や破産準備中などの「実質破綻」は、5月は3件だった(前年同月の発生はなし)。

 5月のG7(主要国首脳会議)伊勢志摩サミットの首脳宣言では、中国の鉄鋼の過剰生産を念頭に「広範な貿易政策上の措置を検討する」と明記された。日本政府は、反ダンピング関税の発動を検討しているとみられる。6月2日までフランスで開かれた経済協力開発機構(OECD)の閣僚理事会では、鉄鋼や造船分野での供給過剰の是正を求める宣言を矢継ぎ早にまとめた。

 主要国がチャイナリスクの是正に向けたアクションを起こす背景には、自国へのダメージが深刻で、政局にも影響が大きいためだという。各国とも関税検討や中国の供給過剰解消に向けた外交ルートでの対話など、保護主義的なものが目立っている。2015年夏の上海総合指数の大幅下落のように急速に顕在化したチャイナリスクへの対応は、短期的には保護主義的にならざるを得ない側面もあるが、本質的な生産性の向上など、自国企業の適応力が高まる施策の実行が急がれるとしている。(編集担当:慶尾六郎)