2月の「チャイナリスク」関連倒産は10件 今後も中国国内のコスト高を要因とした倒産は高水準で推移

2016年03月12日 20:43

 東京商工リサーチによると、2月の「チャイナリスク」関連倒産は10件だった。前年同月比では8件、前月比は7件、それぞれ増加した。2014年1月の集計開始以降、2月としては最多を記録した。2月に倒産した10件は、中国国内の人件費高騰や為替変動による仕入費用の上昇など「コスト高」を要因としたものだった。中国の人件費は引き続き上昇しており、今後も中国国内のコスト高を要因とした倒産は高水準で推移する可能性を残しているとしている。

 負債総額は29億5,300万円(前年同月比25.6%増)だった。負債10億円以上の倒産はなく、29億600万円の負債を抱え松山地裁西条支部へ民事再生法の適用を申請したテラマチが集計された前月と比べて35.3%減と大幅に減少した。

 倒産の背景には、人件費高騰や為替変動などによる「コスト高」がある。産業別では製造業が7件(構成比70.0%)と大半を占め、中国国内の生産に依存している企業には「コスト高」が直撃しているとした。
 
 「コスト高」を要因に行き詰まったケースとしては、中国の現地法人で住設機器・家電品を製造していたHEATECが、日本での受注不振に加え、中国国内の人件費高騰で製造コストが上昇して資金繰りが破たん、2月4日に再度の資金ショートを起こした。負債総額は5億200万円だった。

 中国指導部は、2020年を目標に国民1人あたり所得を2010年に比べ倍増させる方針を打ち出している。これを受け、景気減速下でも中国国内の賃金水準は上昇が続いており、中国への生産依存度が高い日本企業では、引き続き「コスト高」を要因とした倒産が出る可能性があるという。

 3月5日に開幕した第12期全国人民代表大会(全人代)で、李克強首相は過剰な生産や設備に対してメスを入れる方針を示した。石炭や鉄鋼、セメントなど製造業の工場閉鎖や人員削減、在庫圧縮に踏み切るとみられるとしている。

 中国国内では生産能力が飛躍的に向上したが、景気減速で消費が低迷し、中国国内の過剰在庫が安価で日本に流入する事態も現実味を帯びている。また、日本だけでなく国際市場への流入は市場価格の下落にもつながりかねない。すでに、鉄鋼業界では中国生産の余剰分が国際市場に出回り鋼材価格を押し下げ、鉄鋼メーカーの業績に暗い影を落としている。中国の動向次第では素材デフレのさらなる進行も懸念されるとしている。

 全人代では、2016年の国内総生産(GDP)の実質経済成長率の目標を、従来の「7%前後」から「6.5%~7%」に引き下げることを表明した。中国人の訪日観光客数は堅調に推移しているが、経済成長の鈍化がいずれインバウンド効果の恩恵を受ける観光関連や小売、流通業者にも影響が広がる恐れがある。このため、チャイナリスク関連倒産は、当面前年を超える水準で発生していく可能性が高いとみられるとしている。(編集担当:慶尾六郎)