国内鉄鋼最大手の新日鉄住金は、国内4位の日新製鋼を買収し、完全子会社化する方針を固めた。広島市呉市にある日新製鋼の高炉2基のうち1機を停止することで、効率化を図るという。子会社化後も日新製鋼の上場を維持する方針だ。
国内鉄鋼最大手の新日鉄住金<5401>は、国内4位の日新製鋼<5413>を買収し、完全子会社化する方針を固めた。2017年3月を目途に、出資比率を過半数の51%以上66%までに高める。出資額は最大800億円程度になる見込みだ。広島市呉市にある日新製鋼の高炉2基のうち1機を停止することで、効率化を図るという。子会社化後も日新製鋼の上場を維持する方針だ。
国内鉄鋼大手の再編は12年10月以来。新日本製鉄と住友金属工業が合併し、新日鉄住金ができたのが最後だ。今回の買収により、鉄鉱石を溶かして鉄を作る国内の高炉メーカーは新日鉄住金、JFEホールディングス<5411>、神戸製鋼所<5406>の3グループ体制となる。
現在、鉄鋼業界は逆風下に置かれている。中国経済の減速と鉄の過剰生産が原因だ。中国では造りすぎて消費しきれない鉄が大量に輸出され、市場が大幅に低迷。米鉄鋼大手のUSスチールは15年10?12月期の最終損益が9億9900万ドル(約1100億円)の赤字に転落し、インドのクタ製鉄も欧州部門が赤字になり、イギリスで1050人のリストラを決定。韓国ポスコも初の赤字となった。
チャイナリスクの震源地である中国メーカーも大幅減益の見通しだ。宝山鋼鉄は15年12月期の純利益が83%減の9億6100万元(約172億円)。他社の大半は赤字の見通しだ。宝山首脳の言うように「冬の時代に入った」。中国政府としても過剰整備の解消に焦るが、しばらく厳しい状況が続きそうだ。
日本では自動車用など高級鉄板が強いため、影響は限定的だという。しかし、神戸製鋼所の4?12月期の最終損益が138億円の赤字、新日鉄住金やJEFホールディングスも減益となり、通期の業績予測の下方修正を余儀なくされた。
新日鉄住金は世界最大手のアルセロール・ミッタルに次いで世界2位だが、業界の低迷を受け、日新製鋼を買収して経営体力を強める目論見であろう。(編集担当:久保田雄城)