深刻な少子高齢化社会に直面している日本にとって、人口増加対策が急務であることは間違いない。しかし残念ながら、一旦減少したものを回復、増加させるためには、たとえ政府の打ち出す少子化対策が成功したとしても、長い年月がかかってしまうだろう。
少子高齢化は福祉の面だけでなく、日本経済全体に大きな打撃を与えてしまう。一年二年ならともかく、このまま何年にもわたって人口減少が続いてしまうと、国家が疲弊してしまうだろう。これを防ぐためには、若い優秀な人材を育成し、世界に通用する少数精鋭の社会を目指すのも一つの有効な手段であり、大きな意味での少子化対策といえるのではないだろうか。
世界的に有名なノーベル賞の受賞者は、20歳代30歳代の時期に、受賞対象となった発見や発明の着想の原点を見出していることが多いという。おそらく、若手と呼ばれる間のチャレンジ精神や、既存の枠に捉われない自由な発想、思考の柔軟性がのちの成果につながっているのだろう。もちろんノーベル賞だけが成果ではないが、優れた若手研究者を育成することは今後の日本の社会や経済の発展には不可欠であるとともに、これまでになかった多くの可能性や飛躍も期待できるのではないだろうか。
政府も若手研究者への支援を拡大していく政策を積極的に推進しているが、それだけでは限界がある。若手育成のためには、大学や一般企業の支援や助成など、産官学の協同が必要不可欠だ。また、20代30代だけでなく、40歳代の中堅研究者がもっとも助成金などを必要としているという指摘もある。これらをすべてカバーするためにはとくに、企業の力なくしては成り立たない。
若手研究者に対する企業の助成制度としては、例えばトヨタグループ<7203>の公益財団法人トヨタ財団は、「社会の新たな価値の創出をめざして」をテーマに、総額1億円の助成事業を行っている。
また、みつばち産品の製造販売でしられる山田養蜂場も、「みつばち研究助成基金」として、1テーマ100万円から、年間総額1億円の助成事業を行っている。
さらに、半導体大手のローム<6963>も、半導体に関する技術の更なる活性化と発展を目的として、大学や高等専門学校、公的研究機関に所属する若手研究者を対象にした、上限200万円の研究公募制度を創設した。対象となるテーマは、同社の得意分野であるセンサやパワーデバイス、無線通信など 6 つの分野で、第一回ながら103件もの応募があり、同社はその中から20件を採択している。
いずれも上限はあるとはいえ、若手の研究者にとっては企業からの助成は大きな力になる。優れた研究には金がかかる。金銭面の問題で、偉大な発明や発見を断念せざるを得なくなることだけは、日本の将来のためにも避けたいところ。そんなことにならないためにも、企業に助成の輪が今後さらに広がってくることを願いたい。(編集担当:藤原伊織)