地球規模で環境保全への運動が加速している中、とくに自動車業界では排出ガス規制が世界レベルで厳しくなっており、国内外を問わず、自動車開発においては最重要課題の一つとなっている。
自動車大国である日本の排出ガス規制は1966年から実施されており、時代とともに強化され、今では世界的にも最高水準といわれている。2009年にはディーゼル車に対し、発がん性物質であるPM(粒子状物質)と光化学オキシダントの要因であるNOx(窒素酸化物)の大幅削減を義務付けるなど、クリーンな排出ガス実現に向けての取り組みが行われてきた。また、国外向け商品においては、近年、厳しさを増しているアメリカの「LEVⅢ規制」や欧州の規制にも柔軟に対応できるものが求められている。
ひとつの問題として、燃料系ホースからのガソリンの透過がある。現在の最新技術をもってしても、残念ながら、この燃料透過を完全に防ぐことは不可能と言われている。これについては、自動車用ホースで国内トップシェアを誇る住友理工株式会社<5191>や日本ゼオン株式会社<4205>なども関連技術の開発を積極的に努めている。
例えば、住友理工が開発したフィラー(燃料)ホースは、ガソリンを給油するところからタンクまでの一連の部品をモジュール化したもの。チューブ材質を燃料透過が少ない材料を選定し、給油口の圧入部にはOリングを仕込んで微細な燃料の浸み出しを防ぐ加工を施している。具体的には、衝突時の強度と伸びを確保するポリエチレン層で、燃料透過を防ぐEVOH層をサンドイッチし、接着層を含めた計5層構造となっている。もちろん、海外の厳しいガソリン透過規制にも対応しているのはいうまでもない。
また、同モジュール製品は、従来は金属パイプで設計されていた燃料配管を樹脂化することで約40%もの軽量化に成功した。しかも同単品部品としてもそれぞれが優秀なだけでなく、モジュールとして一貫して生産されることで機能面でもコスト面でも大きなメリットと付加価値を生み出している製品だ。
2015年にフォルクスワーゲン社の排ガス規制不正問題が世界的なニュースとなったが、これまで以上に誠実に課題と向かい合う真摯な技術力が、世界から求められることになるだろう。(編集担当:藤原伊織)