石炭火力発電所の新設を容認 温室ガス排出量の問題は?

2016年02月17日 08:22

画・石炭火力発電所の新設を容認 温室ガス排出量の問題は?

4月の電力自由化を前に、石炭電力発電所の新設計画が相次ぐ。環境省は「環境影響評価」で異議を唱えていたが、条件付きで容認する方針を固めた。関西電力や九州電力は、ガス会社などと組んで、千葉県で大規模な石炭火力発電所の新設を計画している。

 4月の電力自由化を前に、石炭電力発電所の新設計画が相次ぐ。環境省は「環境影響評価」で異議を唱えていたが、条件付きで容認する方針を固めた。

 環境影響評価は環境アセスメントとも呼ばれている。開発事業の内容を決めるに当たって、事業が環境にどのような影響を及ぼすのかを事業者自らが調査・予測・評価を実施。その結果を公表し、一般の人々や地方公共団体などの意見を踏まえて、環境保全の観点からよりよい事業計画を作り上げることが同制度の目的だ。

 これまで、電力業界には温室効果ガス排出量削減に向けた仕組みがなかったのもあり、環境省は昨年6月から山口県宇部市など計5件の環境影響評価で異議を唱えていた。政府は昨年、2030年度の電源構成で石炭火力の割合を30%から26%に削減する計画を打ち出し、温室効果ガスの排出量も同様に「30年度に13年度比26%減」を目標としていたのだ。

 これを受けた電力会社は、業界全体の排出目標をつくり、排出量を調整すると決めた。排出量が多い会社があれば、業界内で調整することになりそうだ。関西電力<9503>や九州電力<9508>は、ガス会社などと組んで、千葉県で大規模な石炭火力発電所の新設を計画している。

 石炭火力発電は、微粉炭機で粉砕した石炭をボイラーで燃やして蒸気を発生させ、タービン・発電機を回して発電する仕組みだ。必要性や安全性については、原子力発電と同様に賛否の声が上がっている。

 天然ガスによる発電に比べて温室効果ガスのCO2の排出量が2倍近く多く、石炭が燃焼すると硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)、すす・燃えカスといった「ばいじん」が発生する。これらを危惧する声がある一方、日本の環境技術は世界トップクラスで、大気汚染物質を9割以上除去し、発電効率を高めたり、バイオマス燃料の導入でCO2を削減できるとの資料もある。

 4月から自由に電力会社を選べるようになり、どのような発電方法で電気を作っているのかという部分も重要な要素になる。国民の選択がこれからの電力のあり方を大きく変えるであろう。(編集担当:久保田雄城)