【三井ホームの2016年4~6月期決算】減収、赤字拡大だが受注高も受注残も想定通り

2016年08月03日 09:24

 8月2日、三井ホーム<1868>が2016年4~6月期(第1四半期)決算を発表した。

 売上高は4.9%減、営業損益は54億円の赤字(前年同期は45億円の赤字)、経常損益は54億円の赤字(前年同期は45億円の赤字)、四半期純損益は39億円の赤字(前年同期は32億円の赤字)。三井ホームの場合、工事の完成が第4四半期に集中するため毎期、第1四半期は赤字決算になるが、前年同期よりも赤字額が拡大していた。

 新築事業は、期首の工事受注残高が前期を下回り、完成工事高が535棟から393棟に減少したため14.8%の減収。その売上減に新築事業の売上総利益率の低下が加わり、営業赤字が10.2億円拡大して48.7億円で、採算が悪化していた。それでもリフォーム・リニューアル事業は売上高29.0%増、営業赤字は0.9億円圧縮して1.7億円と採算改善。賃貸管理事業は売上高7.5%増、営業利益は38.3%増と好調。住宅関連部資材販売事業は売上高0.8%減、営業利益6.3%増だった。

 7月25日、2015年3月期、2016年3月期にリフォーム事業の一部で工事原価をめぐる不適切会計が発覚したと発表。営業利益が6000万円程度、過大に計上されたという。8月2日、計画達成を装うために売上原価計上の翌年度への先送り、未完成工事の売上の前倒し計上があったという調査結果と関係者6人の懲戒処分を発表した。市川俊英社長は自主的に役員報酬を2カ月間、20%返上。取締役2人も1カ月分を10%自主返上する。

 2017年3月期の通期業績見通しは、売上高0.4%減、営業利益12.6%減、経常利益12.2%減、当期純利益7.8%減の減収減益見通し。16円の年間配当とともに修正していない。

 4~6月期は対前年同期比で業績が悪化したが、住宅業界は好環境の中にある。失業率はバブル期並みまで低下し、最低賃金の大幅引き上げが決まるなど雇用・賃金環境は改善。毎月勤労統計調査の勤労者の所得状況も堅調。日銀のマイナス金利政策で住宅ローン金利が低下し、経済対策で住宅ローン減税の拡充、省エネ住宅のポイント制度、住宅取得資金に関わる贈与税の非課税措置なども延長・拡充が図られている。

 1~6月期の新設住宅着工戸数は前年同期比5.2%増と好調で、注文住宅など戸建ての「持ち家」の分野も1.9%増加している。三井ホームのコア・コンピタンスである「健康住宅」のような付加価値が高いオーダーメード住宅の分野も、受注環境は決して悪くない。

 全体としては4~6月期の受注高も6月末の期末受注残高も金額ベースでは前年同期を上回っており、会社側のコメントは「当初の想定通りに進捗している」。しかし7月に発覚した不適切会計の問題は、昨年発覚した東芝では業績悪化を招いている。「傾いたマンション」のような施工ミスや住宅の品質の問題ではないとはいえ、マンションや建売住宅よりも所得が高い層をターゲットとしている注文住宅では、会計不祥事によるイメージダウンの新規受注への影響が心配される。(編集担当:寺尾淳)