【自動車業界の2016年4~6月期決算】国内販売は不振続き。海外販売は円高の悪影響をもろに受け、ガマンの時期が続く

2016年08月12日 08:03

 ホンダ<7267>は売上収益5.8%減、営業利益19.2%増、税引前利益10.9%増、最終当期利益13.2%増の減収、2ケタ増益の見通しを修正しなかった。予想年間配当も前期と同じ88円で修正なし。期初の予定通りに第1四半期末に22円を配当する。前期比4%増の491万5000台という四輪車グループ世界販売台数見通しも、ドル円105円の想定為替レートも、期初の計画を変えていない。

 引き続き、減収をもたらす円高の悪影響をコスト削減の努力で吸収し増益というシナリオを描いて臨む。前期は4360億円を計上したタカタ製エアバックにからむリコール費用も、見通しには織り込んでいない。もっとも、倉石誠司副社長は現状のドル円102円前後という為替水準は悪影響が出て苦しいとし、第2四半期以降については「為替動向やアメリカ大統領選挙、テロなど不確定要素が多く、見極めが必要になる」と述べている。

 マツダ<7261>は売上高3.7%減、営業利益25.0%減、経常利益21.3%減、当期純利益14.4%減の減収、2ケタ減益を見込む通期業績見通しも、前期比5円増配の予想年間配当35円も修正しなかった。今期の想定為替レートもドル円110円、ユーロ円125円で変わらない。そのため自動車大手7社で最も円安の想定がマツダになったが、藤本哲也常務執行役員は「為替の円高はきわめて大きな悪化要因。あらゆる施策を総動員して対応する」と述べ、為替相場が落ちついたと判断すればすみやかに業績見通しの修正を開示するという。中期経営計画「構造改革ステージ2」の初年度は多難な船出になっている。

 今期末限りで社名を「SUBARU(スバル)」に変更する富士重工<7270>は通期業績見通しを修正し、売上高は200億円増で1.9%減から1.3%減に上方修正したが、営業利益は200億円減で25.7%減から29.3%減に下方修正、経常利益は100億円減で27.2%減から28.9%減に下方修正、当期純利益は80億円減で32.9%減から34.7%減に下方修正した。5期ぶりの減益で、減収、大幅減益という大勢は変わらない。前期と同じ予想年間配当144円も修正していない。通期のドル円の想定為替レートを105円から106円へ円安方向に修正したが、7~9月期に限っては104円としている。高橋充CFOは「円相場が足元の水準で推移すると、追加の見直しが必要になるかもしれない」と述べている。

 売上高の上方修正の主な理由はSUVを中心とする北米での販売が依然好調なこと。7月以降、アメリカの工場で「アウトバック」の生産能力を増強しており、年末には期初の約2倍の約40万台まで引き上げて納車待ちの解消を目指す。利益項目の下方修正の主な理由はタカタ製エアバッグのリコール費用で、期初の想定よりも300億円ふくらむと見込み、下期に追加費用を計上する。8月に保有していたスズキ株を全て売却して株式の持ちあいを解消したが、業績見通しの修正はないとしている。

 三菱自動車<7211>は6月22日、売上高15.8%減、営業利益81.9%減、経常利益77.3%減、当期純損益は1450億円の赤字を見込みながら、年間配当は無配転落ではなく6円減配の10円という通期業績、年間配当見通しを発表していた。第1四半期決算の発表段階での修正はなし。4~6月期で、通期で予定していた特別損失1500億円のうち83.9%を前倒しで計上したので、今後は最終赤字幅を圧縮していくものと見込まれる。池谷副社長は、為替の円高に対しては販売価格への転嫁などで対応し、「できる限り目標を達成したい」と話している。

 スズキ<7269>は売上高2.5%減、営業利益7.8%減、経常利益11.5%減、当期純利益20.3%減の減収、最終2ケタ減益を見込む通期業績見通しも、前期と同じ32円の予想年間配当も修正していない。105円のドル円の想定為替レートも、約3%増の295万台の四輪車の世界販売台数見通しも変更していない。円高によって円ベースの営業利益は620億円減り、そのうちインドルピーは266億円を占めると予測する。8月に保有していた富士重工株を全て売却し株式持ちあいを解消したが、業績見通しの修正はないという。(編集担当:寺尾淳)