【今週の展望】「夏の流れ」に区切りをつけて秋を迎えるか?

2016年08月28日 20:32

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「避暑地の出来事」が終わり「九月になれば」、NY市場は再び史上最高値更新が続き、「我等の生涯の最良の年」になるのか?兜町でも「何かいいことないか子猫チャン」

 8月19日時点の需給データは、信用買い残は8月12日時点から701億円増の2兆2317億円で、2週ぶりの増加。信用倍率(貸借倍率)は3.28倍から3.33倍へ2週ぶりに上昇した。信用評価損益率は-14.33から-15.03へ0.7ポイント悪化し、2週ぶりの悪化だった。裁定買い残は611億円増の5345 億円で3週ぶりに増加したが、依然として7年ぶりの低水準である。

 東証が発表した8月15~19日の投資主体別株式売買動向によると、外国人は2週ぶりの売り越しで売越額は1667億円。個人は2週ぶりに買い越しで買越額は767億円。信託銀行は5週連続の買い越しで買越額は1079億円。「需給三国志」は個人、信託銀行の買いが外国人の売りとほぼ均衡していた。

 前週のカラ売り比率は連日の40%台。22日は42.6%、23日は44.2%、24日は42.1%、25日は41.9%、26日は44.7%。市場参加者の減少、現物売買の比率低下も手伝って、近来まれにみる高水準が続いている。それは前週の東京株式市場が「プロ、セミプロばかり」の状態に戻っているということでもある。需給データで最も気になるのはやはり、カラ売り比率のこの異様な高さだろう。

 日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)は、12日の今年最低水準から前々週は20をオーバーし、前週は徐々に上昇を続け26日終値は23.78だった。

 全世界注目のジャクソンホールでのイエレンFRB議長の講演があった。時期の明言は避けたものの「追加利上げの根拠がここ数カ月で強まっている」という発言が飛び出した。フィッシャー副議長もテレビで、データ次第としながらも9月利上げの可能性を否定しなかった。26日のNYダウは早期利上げ警戒感で53ドル安で3日続落。NASDAQは反発。ドルが買われ、NY時間の為替はドル円が一時102円に迫り101円台後半、ユーロ円は114円近辺まで円安進行。CME先物清算値も大阪先物夜間取引終値も16590円だった。

 これで、今週は為替が円安に振れるという方向性が定まった。結果に加えて、イベントは通過することそれ自体にも意義がある。イベント待ちの「我慢」から解放されること、前週までの薄商いで売買を手控えていた勢力が一斉に戻ってくること、踏み上げによる「爆騰」のエネルギー源になるカラ売り比率が45%に迫る超高水準にあること、オシレーター系指標に「売られすぎ」シグナルが2個点灯し、騰落レシオも低水準にあることなどを考えると、今週は週明けの29日早々から上昇にドライブがつき、ワルノリ気味の上昇局面もありそうだ。「株式市場は常に行き過ぎる」(クロード・ローゼンバーグ)という言葉もある。日足一目均衡表の「雲のねじれ=変化日」の直後であり、一気に17000円タッチも決してありえない話ではない。

 今週は国内でも中国でもアメリカでも重要な経済指標が多い上に、後半になると今度は「アメリカ雇用統計待ち」が出てきて冷却されそうだが、それでも25日移動平均線(26日は16555円)を超える16000円台後半の水準は維持できそうだ。下げても25日線までかと思われる。

 ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは16500~17000円とみる。

 8月のマーケットは当初、7月の日銀会合後に規模がほぼ倍増した「日銀のETF買い707億円」への期待と畏れを抱いていた。大げさに言えばそれは、この世の終わりに出現して救済をもたらす「救世主」をも彷彿とさせた。「我らが東京市場に入り込み、毎日好き勝手なマネーゲームに明け暮れる海外の投機筋を、〃正義の味方〃日銀がやっつける」という勧善懲悪の物語まで期待されていた。

 だが、現実は芝居や映画の筋書き通りにはいかない。25日、日銀買い707億円が入ったにもかかわらず日経平均がマイナスで終わったことは、「善玉」に失望をもたらし、「悪玉」は「王様は裸だ」と日銀買いの力を見切った。つまり〃幻想〃から覚めたのである。翌26日も日銀は連日の707億円投入に踏み切ったが、後場急落し大幅続落で終えた。そこに「今まで期待しすぎた」「恐るるに足らず」という空気の微妙な変化が感じられた。

 イエレン議長のジャクソンホール発言によりマーケットの状況が一変しそうな今週以後は「日銀買いの無力化」の傾向がはっきり現れてくるかもしれない。「荘厳なるものと、滑稽なるものの間の距離は、一歩しかない」(ナポレオン・ボナパルト)(編集担当:寺尾淳)