2016年の夏は、大阪で猛暑日が過去最多を記録するなど、全国各地で過酷な気候となった。 残暑も厳しい気温が予測されているが、子供のいる家庭では、夏休みが終わって一段落している人も多いのではないだろうか。
そんな中、今年も恒例の「キッズデザイン賞(KIDS DESIGN AWARD)」が発表された。
キッズデザイン賞は、「子どもが安全に暮らす」「子どもが感性や創造性豊かに育つ」「子どもを産み育てやすい社会をつくる」ための製品・空間・サービスで優れたものを選び、広く社会へ伝えることを目的として設置されたもので、受賞作品には「キッズデザインマーク」の使用が認められる。分野も多岐にわたり、日用品から住宅、街づくり、ワークショップ、調査研究まで幅広い。また、大人向けに開発された一般的な商品でも、子供への配慮があれば受賞対象になることもある。
「第10回キッズデザイン賞」では、7月8日に受賞作品297点が発表された。応募総数は503点で過去最高であった。さらに、8月29日には、受賞作品の中から選ばれた優秀作品34点が発表され、最優秀賞である内閣総理大臣賞には、東京内野学園 東京ゆりかご幼稚園、渡辺治建築都市設計事務所、リズムデザイン=モヴ、三高設計による「東京ゆりかご幼稚園+里山教育」が選出された。八王子にある東京ゆりかご幼稚園は里山文化豊かな環境が特徴の施設で、その環境に子供たちが主観的にかかわる点や、自然や食農、労働といったテーマを一体に捉えた教育が評価された。
また、今回から新設された東京都知事賞には、組立て式キッズチェア「RK-Chair」が選ばれた。
住宅関連では、積水ハウスの指挟みを予防できるように配慮した引手「安全配慮引手」が受賞したほか、パナホームは、子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン部門で「子どものことを考えた世界基準の室内空気質実現への取り組み」と、子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン部門でも「KodoMotto(こどもっと)」の2つで、二年連続のダブル受賞を果たした。さらに「KodoMotto(こどもっと)」は審査委員長特別賞も受賞し、同社初の上位賞入賞となった。
「KodoMotto(こどもっと)」は、同社とパナソニックとの共同研究によって開発されたもので、子育て時期の両親から、子どもの生活シーンにおけるニーズを掴み、定性調査・定量調査で検証を行い、子どもの成長に応じたコンセプトやくらしのアイディアを導き、子どもの自立心を育む「可変子ども室」や「片付けしやすい収納」に加え、「学べて遊べる子どもの居場所KODOMO+(コドモプラス)」など、子どもの成長に合わせ変化する住まいを提案。さらには、宿泊体験ができるモデルハウスで実際に体感していただいたユーザーの声を集めることで進化させていく取り組み。審査員からも創発する仕組みの新規性を高く評価されている。
少子高齢化の時代、子供を産みやすく、育てやすく、子供自身も暮らしやすい社会の実現は、全国民で取り組まなければいけない国家的な課題だ。キッズデザイン賞のような奨励制度は、その大きな後押しになるだろう。11年目を迎える来年も、さらに活性化することを祈りたい。(編集担当:松田渡)