大阪大学、パッチ式脳波センサー開発 運転時覚せい状態や認知症等脳疾患の計測にも

2016年09月06日 08:04

 体温を測るように脳波を手軽に測定し、能力開発や健康維持に役立てられるようになる日が近づいている。大阪大学産業科学研究所の関谷毅氏、金沢大学こどものこころの発達研究センターの菊知充氏を中心とするプロジェクトチームは8月17日、パッチ式の脳波センサーで睡眠中の脳波を計測することに成功した。パッチ式脳波センサーの特徴は、厚みが6mm、重さが24gで手のひらに収まるほどのサイズとなっており、軽量コンパクトながら大型の医療機器と同じ計測精度を持つという。冷却シートを貼るように額に装着できて、脳の状態をリアルタイムに可視化できる。

 従来の脳波測定機器では、頭部に複数の電極を装着し一定時間の測定が強いられるため、測定の負担が大きく、大掛かりな機器が必要となるため測定場所や状況も限定されるといった欠点があった。ウェアラブルデバイスの脳波センサーでは、ニューロスカイ社の「MindWave Mobile」など、既にヘッドセット型のものが多く市場に出ており、医療や娯楽の分野で活用されているが、装着時の抵抗がネックとなってた。今回開発されたパッチ式脳センサーでは装着の負担や違和感が少なく、生活場面での長時間の脳波測定が可能となる。

 今回の技術を応用することで、運転時覚せい状態のモニタリングや認知症のような脳疾患の計測にも応用が可能だ。それ以外でも脳波測定の領域では、従業員の脳波の状態をリアルタイムで計測することで生産性を高め事故やミスを未然に防止するといったビジネスでの活用や、ユーザーの心理状態を把握し、自動的にニーズを満たすような生体コントロールでの活用、ユーザーが脳波の状態をマネジメントすることでパフォーマンスを最大限に引き出すような能力開発での活用、ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者のコミュニケーションツールやてんかん患者の綿密な症状の把握など医療現場での活用など、幅広い分野での応用が期待されている。

 パッチ式というアプローチを活かして生活に根差した環境での高度な応用が可能になれば、さまざまな産業の発展や個人の能力のエンパワーメントに大きく貢献することが見込まれるため、同機器の早期実用化が望まれる。(編集担当:久保田雄城)