【今週の展望】連休の谷間に日米同時の中央銀行イベント劇場

2016年09月20日 06:57

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21世紀の悪習「金融マーケットの劇場化」。今年最大の見世物が今週、日米同日開演。蕩尽される下馬評、過剰なサプライズ演出。生半可な刺激では、観客は罵声を飛ばす。

 今週、9月第4週(19~23日)は、19日の月曜日が「敬老の日」、22日の木曜日が「秋分の日」の休日なので3日間の取引。「シルバーウィーク」の連休モードとはいえ、20~21日にFOMCと日銀会合が重なる日米中央銀行イベントウィーク。

 世界の主要株式市場の休場日はない。

 国内の経済指標、イベントは、連休の谷間の20~21日に日銀の金融政策決定会合が開催される。21日の正午以降に結果が発表され、大引け後の午後3時30分から黒田日銀総裁が記者会見を行う。日銀会合以外では21日の百貨店売上高と訪日外国人客数に注目。「爆買い」はもうすでに過去の出来事だが、それを当て込んで過剰投資し「オフサイド・トラップ」をかけられてひっくり返った小売関連企業の不況風がこの秋、景気や雇用を暗くするかもしれない。8月の企業倒産件数は2ケタ増だった。

 20日には8月のコンビニエンスストア売上高、日本製半導体製造装置BBレシオ、21日には8月の貿易収支、訪日外国人客数、全国百貨店売上高、23日には7月の全産業活動指数が、それぞれ発表される。20~21日に金融庁などが主催の「フィンテック・サミット」が東京駅前の丸ビルで開かれる。

 主要銘柄の決算は、20日にクスリのアオキ、21日に日本オラクル、23日にオプトエレクトロニクスが発表する。新規IPOはなし。次回は26日で、来週は東証マザーズばかり5件ある。

 海外の経済指標、イベントは、日銀と同じ20~21日にアメリカの連邦公開制度委員会(FOMC)が開催される。日本時間で22日未明に結果が発表され、イエレンFRB議長が記者会見を行い経済見通しを公表する。利上げは見送られる公算大だが、ひょっとしたらひょっとするかもしれず、油断は大敵。FOMC以外では22日のアメリカの中古住宅販売件数が重要だろう。

 19日にはアメリカの9月のNAHB住宅市場指数、20日にはアメリカの8月の住宅着工件数、建設許可件数、22日にはアメリカの8月のシカゴ連銀全米活動指数、7月のFHFA住宅価格指数、8月のCB景気先行総合指数、中古住宅販売件数、9月のカンザスシティ連銀製造業活動指数が、それぞれ発表される。

 22日にトルコとニュージーランドが政策金利を発表する。9月24日~10月15日、南アフリカのヨハネスブルクでワシントン条約第17回締約国会議(COP17)が開催される。日本にとって最大の関心事は欧米が騒いでいる「象牙」よりも「クロマグロ」。その成り行き次第では回転寿司チェーン業界が重大な危機に直面する。

 アメリカの主要企業の決算発表はない。

 前週末16日の終値は16519.29円だった。週間騰落は446円安。そのテクニカル・ポジションを確認すると、移動平均線は5日線、25日線、200日線は上に、75日線は下にある。75日線は16355円で164円下。16588円の5日線は69円上、16722円の25日線は203円上。16901円の200日線は382円上で、孤高の旅を終えて今では太陽系の仲間。

 日足一目均衡表の「雲」は、16日時点では16057~16228円。16日終値は雲の上限から291円上にある。前週は下げても雲の上限に接することはなかったが、今週はわからない。20、21、23日とも雲の下限は一段下がった15903円で一定だが、雲の上限が20日は16296円、21日は16509円、23日は16565円と日々、上昇していく。日米中央銀行イベントをめぐって乱高下するようなら「雲タッチ」しての反発がありうる。雲の幅も週末には662円まで厚くなり、弾力が増す。

 ボリンジャーバンドでは、16日終値は25日線-1σの16516円と+1σの16928円の間のニュートラル・ゾーンだが、あと3円安ければ下にはみ出すというギリギリの位置。

 オシレーター系指標は「売られすぎ」シグナルが2個点灯している。11.1で売られすぎ基準の30を下回ったストキャスティクス(9日・Fast /%D)と、-72.7で売られすぎ基準の-50を下回ったRCI(順位相関指数)。それ以外はニュートラルなポジションが多く、サイコロジカルラインは6勝6敗で50.0%、25日移動平均乖離率は-1.2%、25日騰落レシオは94.1、ボリュームレシオは51.2、RSI(相対力指数)は41.5である。

 テクニカル指標を総合すると、移動平均線で下にあるのは75日線だけ。日足一目均衡表の「雲」は今週、下支えのクッションになる可能性があり、ボリンジャーバンドによると下方向よりも上方向のほうが動きやすい。しかもオシレーター指標には「売られすぎ」が2個もある。「下値限定」「上値は追える」という結論が導き出される。

 9月9日時点の需給データは、信用買い残は2日時点から205億円増の2兆1714億円で2週ぶりの増加。信用倍率(貸借倍率)は2.90倍から2.86倍へ3週続けて低下した。信用評価損益率も-13.84から-11.90へ2週間連続で改善した。

 驚くべきは裁定買い残で、メジャーSQ週とはいえ3529億円減で残高が3385 億円になり、4週ぶりの減少。ほぼ半減する大幅減で、2009年3月13日の3362億円以来7年6カ月ぶりの低水準になった。裁定売り残は4822億円で、買い残と売り残の数値が逆転したのは18年ぶり。海外投資家が買いポジションを放棄して退いた証拠で、夏場から個人投資家の多くが姿を消して全く治らない薄商いともども、異常事態が起きている。