【今週の展望】連休の谷間に日米同時の中央銀行イベント劇場

2016年09月20日 06:57

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21世紀の悪習「金融マーケットの劇場化」。今年最大の見世物が今週、日米同日開演。蕩尽される下馬評、過剰なサプライズ演出。生半可な刺激では、観客は罵声を飛ばす。

 東証が発表した9月5~9日の投資主体別株式売買動向によると、外国人は2週続けて売り越し売越額は3338億円。個人は2週続けて売り越し売越額は1020億円。信託銀行は8週ぶりの売り越しで売越額は444億円だった。これはメジャーSQがあった前々週のデータだが、海外投資家の大量売りは前週も続いたとみられ、「東京市場からの一斉総退却」のような様相を呈していた。

 前週のカラ売り比率は、12日が43.4%、13日が41.6%、14日が43.8%、15日が44.9%、16日が39.7%だった。前々週は40%を超えたのは8日の1日しかなかったが、前週はうって変わって連日の40%台で、15日には45%に迫る異常さをみせた。日銀の733億円のETF買いを蹴散らすほど売り圧力が強かったのも納得できる。

 通称「恐怖指数」の日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)は、9日終値は20.46だったが15日は24.48まで上昇し、16日終値は少し下げて23.84。マーケットのこの恐怖は本物か。

 前週末16日のNYダウ終値は88ドル安でNASDAQもマイナス。消費者物価指数(CPI)は+0.2%で市場予測を上回り、インフレ率改善を印象づけた。原油先物価格が下落してエネルギーセクターが安く、ドイツ銀行が司法省に和解金140億ドルを支払って金融セクターが売られたが、それほど深刻ではなく為替のドル円は102円台を堅持した。CME先物清算値は16240円、大阪の先物夜間取引終値は16250円で、配当権利落ち分を足すと16350~16370円になる。

 19日のNY市場がふるわず今週の東京市場が20日、16400円割れで安く始まったとしても、75日移動平均線(16日は16355円)が引き続き防衛線になるとみる。20~21日は節目の16500円前後がベースラインで、日銀会合の結果次第で21日後場は上積み。前回の「金融政策を総括的に検証する」をめぐって事前の観測報道が乱れ飛んでいるが、結果が「金融政策現状維持」の可能性も当然ありうる。だが、もしそれで失望されたとしても下落は限定的で、終値までに16500円付近まで戻るだろう。なぜなら前週まで、追加緩和の観測報道が入っても日経平均はそれを織り込んで上昇せず、逆に下がったからだ。

 日銀会合を通過して日が暮れ、22日未明に今度はFOMCの結果が出る。9月利上げの可能性は日銀の追加緩和よりも低そうだが、22日の「秋分の日」の休み、NY市場の結果を受けて始まる23日は、FOMCがどんな結果であっても上昇できると予想する。

 16900円は、16日時点で16901円の200日移動平均線に近く、ボリンジャーバンドの25日線+1σの16928円の手前にあるが、23日の16900円タッチの可能性はあり。なぜならマーケットにとってイベントは「通過すること、それ自体に意義がある」からで、もし利上げなしなら金融引き締め先送りを好感、利上げしても「区切りがついた」で心機一転、次のステージに進める。マーケットにとって一番良くない状況とは、「どうなるかわからない」状態がズルズル続き、引かれて様子見されることである。

 22日はアメリカの経済指標の発表が多く、23日は9月中間期の配当権利取りの最終売買日である27日の前々営業日。前週まで「総退却」していた海外投資家も個人投資家も、東京市場に戻ってくるかもしれない。

 ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは16300~16900円とみる。

 今週の日銀会合、FOMCは、「金融マーケットの劇場化」の今年最大の見世物と言っていいだろう。〃観客〃の欲求は生半可な刺激では満足しなくなり、どんどんエスカレートしていく。それは、円形劇場での流血ショーが市民の人気を博し、時代が下るにつれて「死ぬまでやれ」と残酷さがエスカレートしていった古代ローマ人の物語に似ている。その物語は西暦410年、外敵のローマ侵入、徹底的な略奪に伴うローマ市民(=観客の子孫)の大虐殺、奴隷化、難民化という凄惨な出来事でピリオドを打った。(編集担当:寺尾淳)