7年連続で企業の倒産件数が減少。それでも「安泰」といえない理由

2016年09月24日 20:37

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倒産件数は7年連続で前年を下回り、25年ぶりに9000件を割り込んだ

 東京商工リサーチの調べによると、2015年の全国企業倒産(負債総額1000万円以上)は8812件、負債総額が2兆1123億8200万円となることが分かった。

 倒産件数は7年連続で前年を下回り、25年ぶりに9000件を割り込んだ。

 倒産数が減少している背景としては、中小企業に対して金融機関が柔軟な金融支援を行っていることや、大手輸出企業の業績拡大に伴って景気が底上げされていることなどが考えられる。また円安基調が続く中、原油や鉄鋼関連の資源安の影響も大きい。

 とはいえ、負債総額自体は前年比12.7%増、負債100億円以上の大型倒産が15件と前年の倍の件数となっており、上場企業倒産も3件発生しているほか、「チャイナリスク」関連倒産も前年46件から76件と6割増となっている。

 そんな中、リスク分散の意味も含め、企業の異業種分野への参入が盛んに行われている。

 例えば、仁丹の製造販売老舗の森下仁丹などが良い例だ。同社の看板商品である銀粒仁丹の売り上げは1982年の39億円をピークに減少の一途をたどり、2003年にはついに30億円もの大きな赤字を計上する事態に陥った。そこで同社は銀粒仁丹で培ったコーティング技術を活かし、継ぎ目のない独自のシームレスカプセル技術を開発。カプセル事業に乗りだした。その技術は国内の企業に留まらず、海外のサプリメント市場や医薬品市場にまで進出し、今や同社の売り上げの約3割を占めるまでに躍進している。

 また、自動車の防振ゴムで世界シェアNo.1を誇る住友理工グループも、その技術力を活かして、健康介護分野など、非自動車事業に積極的な姿勢を見せている。

 同社では2014年10月に研究開発本部から健康介護事業室を独立させ「スマートラバー(SR)」センサ技術を搭載した製品を医療・介護・健康分野に展開。圧力を可視化する「SRソフトビジョン」など、介護・医療の臨床現場にありそうでなかった技術を提供して、順調に需要を伸ばしている。また、同グループ会社のTRIサイタマではさらに、食品関連部門で、食品衛生法が認可されたシリコーンゴム材料を使用し、筒とフタが一体となったゴム逆止弁を開発したり、医療機器分野では、マイクロ流路チップなど、同グループの材料技術や生産システムを活かして、様々な分野に経営の裾野を広げている。

 今年4月から始まった電力自由化では、携帯電話事業者やIT業者など、これまではエネルギー事業とは無縁と思われた企業が続々と参入しているが、ここでもやはり、元の事業のノウハウを巧みに活かしているのが面白い。とくに有力とされる携帯電話事業者は、インターネット通信網で全国的な顧客を抱えているほか、電力の契約形態が電話の通信料金のそれとよく似ていること、さらにはそのインフラを活用することで、得意のセット割販売が見込める点などが大きいといわれている。

 どんな業種や分野でも、いつまでも安泰というわけではない。大企業や上場企業であっても、シビアな生き残り競争の只中にいることは間違いない。生き残り、発展し続けるためには、その企業がこれまで培ってきた技術を、いかに現在、そして未来にわたって、社会のニーズに即した新たな価値を見出せるかにかかっている。(編集担当:藤原伊織)